……………………………………………


「ちゃんと来たんだ。意外」


静菜ちゃんは約束の時間ピッタリにやってきた。


「帰られたら困るから早めにきた」

「早めって?」

「9時半」

「は?早すぎでしょ。バカなの?」

「万が一なにかあって遅刻しても連絡できないし」


自分でもバカみたいだと思った。
いままでは俺にとっての待ち合わせなんて遅刻するためにあるようなんもんで時間通りに行ったことすらない。
なのに、どうしても帰って欲しくなくて、今日だってすごく早起きしたし、気合い入れたし、早く出たし。
こんなの誰だよって感じでわらえてくる。


「なんか今日静か?」

「いや、そんなことはないはず」


俺が座っている隣に座る静菜ちゃんに、緊張が走ってしまって、少しだけ横にズレる。


「え、なに?」


横にずれた俺に怪訝な顔をする。


「き、気にしないでほしい。ごめん」


俺、なんでこんなんなってんだ?
これじゃあまるで静菜ちゃんのことが好きみたいだ。
好きなのかもしれないけど、そんな相手いままでいなかったからどういう態度をしたらいいのかがわからない。


「そっちから誘ってきたくせになんなの?」

「いや、ごめん」

「別に何とも思ってはいないけど」


何を言うのにも無表情の静菜ちゃんに胸が痛くなる。