「それでもよければ全然デートくらいするけど」

「........っ、あ、明日とかどうかな?」


フッと笑う彼女に一瞬見惚れて、反応が遅れてしまった。
女の子に対してどもることも初めてでなにからなにまで自分じゃないみたいだ。


「明日ね。わかった」

「あ、じゃあ!連絡先!」


俺は慌てて自分のポケットからスマホを出す。


「凛、お前邪魔。何してんの」


ここの席の持ち主である哲に頭を叩かれる。


「静菜ちゃんに連絡先を聞こうと思って」

「は?お前、坂口にまで手出してんの?」

「出されてなんかいない!」


静菜ちゃんがキッと俺を睨む。


「え、俺なんか変なこと言った?」


むしろいま言ったのは哲のような気がするけど、もしかしたら俺も何か言ったのかもしれない。


「え、もしかして凛から誘ったの?」

「うん、まぁ」

「凛から誘ったなんて初めて聞いたぞ。すげーな坂口」

「別に求めないよ、そういうの。すごくないし」


静菜ちゃんは気にする素振りもなく、また本に視線を戻してしまう。


「あ、連絡先........」

「教えないよ。来ることを期待して待ち合わせ場所にいたらいいじゃない」


それだけ言うと席を立ってしまう。