「ごめんね?」

「........」


そんな俺の様子に構うこともなく、その子はスっと立ち上がって、どこかへ行ってしまった。


「なにあれー、せっかく凛くんが謝ってるのに態度悪くない!?」

「いやいや、ぶつかったのは俺だから」

「凛くんやさしー!」

「別に普通だよ」


あんな反応をされたことがいままで一度もなくて、正直彼女のことが気になった。


「まぁあの子クラスでもういてるじゃん?」

「え、同じクラスだっけ?」

「もう凛ってほんとーに興味ないよね。哲の後ろの席の子だよ」

「ふーん........」


そもそも、いま一緒にいるこの子も同じクラスだったんだって感じだけど。


「哲の後ろの席か........あの子なんて名前なの?」

「え?名前........?」

「うん、ぶつかっちゃったからね。名前だけでも知っておかないと失礼でしょ」


こんな綺麗事なんてデタラメだ。
ただ、あの子の名前が知りたかっただけ。


坂口(さかぐち)さん。坂口静菜(しずな)ちゃんだよ」

「ふーん。ありがとう。なーんか気が乗らないから今日は帰るわ」


何となく、自分に興味のな刺そうなあの子のことが気になった。
初めてだった、誰かの誘いを断ったのも誰かに興味を持ったのも。