同棲一日目。

 多美さんのアパートはきれいだった。少しだけ、煙草が匂った。

「買い物に行ってくるから、純を見てて」

 生後半年の女の子と、二人で残された。

 寝顔に吸い寄せられる。透きとおるような唇の薄い皮膚を、目を近づけて見た。

 甘い息を嗅いだ。

 やっぱり幼女はいい。

 この世で最高の生き物だ。

 と、純が急に泣きだした。

 おしっこだろうか?

 おむつの上から局部に手を触れてみた。濡れているかどうかは、わからない。

 おむつをゆっくりと外した。黄色いうんちをしていた。

 おむつ拭きを取ってきて、優しく拭いた。何度も何度も、丁寧に。

 ドアのあく音がして、ビクッと振り返った。多美さんが帰ってきたのだ。

 ああ……二人っきりの時間が、終わってしまった。

「ねえ」

 多美さんに言った。

「ぼく、専業主夫になってもいい?」

「主夫? 結婚して、籍入れたいの?」

「そういうことじゃなくって、子育てに専念したいんだ」

「バイトを辞めたら、賠償金の送金ができないんじゃなかった?」

「せめて、純ちゃんが幼稚園に入るまでは、ちゃんと育てたい。だから」

「わかったわ。わたしが働くから、キーくんが育児に専念してね」

   *  *  *

 多美さんは、母乳をあげなかった。

 清伸がミルクを作った。

 離乳食も作った。

 お歌を聴かせ、抱っこであやした。

 夜泣きをすると、純をおんぶひもで担いで散歩に出た。

 多美さんは仕事から帰ってくると、テレビばかり観ていた。

 お風呂に入れるのも、一緒に寝るのも、すべて清伸がする。

   *  *  *

 三年が経過し、純は三歳半になった。

 ふと、友華ちゃんと同い年になったな、と思った。

   *  *  *

 純の首を絞める夢を見た。

 そうすれば、永遠に、純は三歳のまま。