「……真希ちゃん、何かやらかした?」


それを呆然と見送った棗は、ノートをぱたりと閉じて、カウンターに頬杖をつく菜穂の横に並んで尋ねる。


「別に、やらかしたってほどじゃない。モップにおいて一番大事なモップ部分の存在を忘れて、棒だけで掃除しようとしてたってだけの話」


菜穂が事情を説明している間に、雑巾を手にして戻ってきた真希が再び二人の前を駆け抜ける。
菜穂と棗は同時に首を動かして、それを見送った。


「どう見てもアホキャラだけどさ、あれであの子、お勉強は出来るみたいなんだよね。一体脳みそどうなってんだろ」


心底不思議そうに呟く菜穂に、棗はクスリと笑みを零す。

突然笑った兄を不審がって菜穂が隣を見上げると、棗は一生懸命床を雑巾がけしている真希を見つめながら口を開いた。


「そのギャップがさ、また堪んないよな」




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