「菜穂さん大変です!このモップ、モップなのにモップの部分がありません!これは不良品じゃないですか!?」

「そのモップ、先端が着脱式なんだよ。昨日棗が厨房で牛乳零したの拭いたから、洗ったの。たぶんまだ乾いてないと思うか――」

「じゃあ今日は、雑巾で拭けばいいということですね!」

「え?いや、今日は――」


今日は箒で掃くだけでいいと伝えるつもりだったのに、既に真希は用具入れに向かって駆け出していた。


「あっ、真希ちゃん終わった?俺送って行くけ――」

「すみません!まだです」


一足先に自分の持ち場である厨房の掃除を終えた棗が、菜穂の後ろにあるドアを開けて声をかける。

そんな二人の前を、真希は風のように駆け抜けた。