帰宅ラッシュの時間が過ぎた頃、エトワールの扉には“閉店”のプレートがぶら下がっていた。


「いやあー悪いね。いっつも手伝わせちゃって」


ちっとも悪いなんて思っていなさそうな菜穂の声を気にもせず、真希は一日の勤めを終えた棚を濡れ布巾で綺麗に拭き上げていく。


「いいですよ、全然。花の女子大生は、お掃除が得意です!」

「……よくわからん」


本日の売り上げをノートに書き記している菜穂を横目に、真希は棚拭きを終えて今度は床を箒で掃くと、最後にモップを手に取る。
そのタイミングで菜穂が


「ねえ真希、さっきから気になってたんだけど、そのモップ先端が付いてないけどどうやって使うつもり?」


その問いに、真希は、はて?と首を傾げながら、持っていた物の先端を見つめる。

箒と一緒に用具入れから取り出した時は何とも思わなかったが、それは確かに棒だけで、モップに置いて一番大切な部分が付いていなかった。