おどけたようにそう言えば、真希はクスっと可笑しそうに笑ってから棚の方に向き直り、並んだパンを一つ一つ丁寧に見始める。
その姿を愛おしそうに見つめる棗の背中に


「振られたの?」


明らかに面白がっている様子の菜穂から声がかけられる。

詳しい事情は知らないながらも、今までの真希とのやり取りで察するところがあったのだろう。

棗がチラッと後ろに視線を向ければ、カウンターに頬杖をついてニヤニヤと意地悪く笑う菜穂の姿が見えた。


「まさか。これからに決まってるだろ」


その意地の悪い顔に対抗するように、棗はちょっぴり強気で言い放つ。

背後でそんな会話がなされていると知らない真希は、香ばしくて甘くて優しい香りに包まれながら、笑顔で双子を振り返った。


「菜穂さん、棗さん、今日のおすすめは何ですか?」