それでも何とか走りに走って、ようやく見つけた張り出した屋根の下に、必死の思いで駆け込む。


「雨宿り、する意味なかったかも……」


既にどうしようもないくらいぐっしょりと濡れた服に、思わずため息が零れる。

その時、カランカランと小気味いい音がして、香ばしい香りがふわりと鼻腔をくすぐった。


「そこの君、雨宿りついでによかったら見ていかない?今ならタオルの貸し出しサービスも付いてるよ」


声のした方へ顔を向けてみると、開かれた扉の向こうから、手招きする人影がぼんやりと見えた。

濡れた眼鏡のせいでよく見えないが、声を聞く限りおそらく男性。それも若い。

見ていかないかと声をかけるということは、何かのお店だろうか。

慌てて駆け込んだうえに今は眼鏡が機能していないせいで何のお店かはわからないけれど、タオルの貸し出しサービスという言葉につられてつい足が動く。

導かれるままに扉をくぐると、濡れた体が、温かい空気と美味しそうな香りに包まれた。


「いらっしゃい。ようこそ、“エトワール”へ」