「棗さん、私、あれからずっと考えてたんですけど……あっ、もちろん!テスト勉強の合間に考えてたんですけど、でもやっぱり棗さんが言っていたことはよくわからなくて……すみません」


真希はしゅんとしたように頭を下げると、「でも」と再び顔を上げた。


「棗さんのことは、菜穂さんや学校の友達に負けないくらい、大好きですよ!」


それを聞いた棗は、もどかしそうにレジカウンターを回り込んで足早に真希のもとに向かうと、ちょっぴり迷った末に、いつものようなハグではなく、そっと頭に手を乗せた。


「ありがとう、真希ちゃん。……今は、それで充分だよ」


ポンポンっと弾むように頭を撫でる棗に、真希は嬉しそうな笑顔を返す。
その顔に、やっぱり抱きしめたい衝動が湧き上がってきたけれど、棗はグッと堪えて撫でる手を下ろした。


「久しぶりだし、ゆっくり見て行ってよ。あーあ、真希ちゃんが来てくれるんだったら、もうちょっと気合い入れて作るんだったなー」