目を見張る真希に、訂正の言葉を続けようとした棗だったが、嬉しそうな様子を見ていたら、今日こそはという気持ちが急速にしぼんでいくのを感じた。

でもせめてこれだけはと、棗は一旦閉じた口をもう一度開く。


「……いつか、真希ちゃんの中でも俺が特別な存在になったらいいなって思ってる。…………けど、そんな日は来るのかな……」


最後の台詞は、本当は心の中に留めておくだけで言うつもりはなかったのに、気が付いたら声に出てしまっていて、それが己の自信のなさを表しているようで、棗はちょっぴり情けない気持ちになった。

そんな棗の気持ちにちっとも気が付いていない真希は、項垂れる棗を見て首を傾げる。


「棗さん、どうかしました?」


こちらの方が上背があるので、自然と上目遣いになっている真希が可愛くて、もう一度引き寄せて抱きしめたい衝動にも駆られたが、グッと堪えて無理やりに口角を上げた。


「何でもないよ。さて、帰ろっか」




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