~私ができること~
2017年10月…
やっと実習が終わり残すところ就活、卒論、国試となった。あれから、大ちゃんからたまにLINEは届くが、本当のことを聞くのが怖くて当たり障りない返信を返すだけの日々が続いた。大ちゃんと本心で話せないそんな日々だった。
「そろそろ就活しなきゃね~、ななはどうするの?」
「あ~そうだね…。
一応、施設見学は始めたんだけど、まだ受けたいところがなくてさ」
「そっか~。でも、施設見学行ってるななは偉いよ。
私なんてなんもしてないよ!」
「いやいや、澪ちゃんは国試勉強、超頑張っているじゃん!」
そんな会話をしながら澪ちゃんと私は国試の勉強をしていたが、なかなか集中できない自分もいた。私は、大ちゃんや優香さんのように特別養護老人ホームの生活相談員に就きたいと思っていたが、何か所も見学をするなかで現実を突きつけられていた。
『経験のない子がいきなり相談員ね~』
『入居者の生活何も知らなくて相談乗ろうとしているってことだよね』
そんな心無い言葉ばかり返ってきた。確かにそうかもしれない。それだけすごいことを大ちゃんと優香さんはしているんだよね。2人と比べたら何の取柄もなく、自信もない私だったがどうしても諦めきれなかった。
今日も施設見学で、施設の説明を受けながら施設をぐるっと一周した。そして、相談室に戻り再び腰を下ろすと思いがけない一言を言われた。
『話している感じ、特に千葉さんには生活相談員向いてないと思うよ』
一瞬、時が止まったような気がした。悔しい。1時間会っただけでななの何が分かるって言うの?帰りのバスでボロボロと涙が溢れてきた。否定されるってこんなに傷つくんだ。イライラとしたまま、家に着き崩れ落ちて泣いた。そんな時、私が無我夢中で電話をかけた相手は大ちゃんだった。自分でも驚いたが、大ちゃんに聞いてほしいそう思ったのだ。
「おう。ななみ久しぶり」
「もう悔しい。あんな施設こっちからお断りだ!!」
「元気だな~。全部話してみな。聞いてやるから」
大ちゃんに今の思いを全てぶつけた。大ちゃんは「うん、うん」とうなずきながら話を聞いてくれて、怒っている私をなだめてくれた。
「私絶対、あの人見返してやる!
確かに私も焦っていたのかもしれないよ。
早く大ちゃんや優香さんみたいになりたいから。
でも、正直怖い気持ちもあったの。本当に私なんかにできるのかって。
初めは介護現場の思いとか入居者の気持ちに寄り添ってから
相談員目指した方がななには合ってるのかもしれないって
本当はそう思っていたの」
「ななみ?それめっちゃいい考え方じゃん。
自分のこと見つめられていると思うよ。
…そうだ、ななみ、この曲聴いて?」
♪1日24時間を越えるのがすごく辛い日もある
だけど君の笑顔、思い出すだけで頑張れる
遠い何十億年も前から繋がってたんだね
凸凹道も君と私ならきっと
ずっと笑って歩いていけるよ
だれも知らない遠い昔から 恋人なんだね
ずれてつまずいても 重なり合う
二人だけのメトロノーム 刻んでゆこう
メトロノームだ…。私がMACOちゃんのNewアルバムで1番好きな曲。大ちゃんもそうなのかな?
「俺はななみに笑っていて欲しい。ななみが決めたことは応援する。
迷うな、自分の決めたことなんだから。
俺、辛くてもななみの笑顔思い出すと疲れなんて
一気に吹っ飛ぶんだからな」
「大ちゃん…ななもだよ。大ちゃんの笑顔いつも思い出す。
頑張れるよ」
「そうなのか?一緒だな。ななみのこれからが楽しみだ!!」
あんなに大ちゃんのことを疑って、大ちゃんのことを思って泣いて、大ちゃんに事を考えてしまう自分が嫌なはずなのに、なんでこんなに心が温かくなるんだろう。どんなに私が取り乱したって、大ちゃんはいつも変わらない声で、態度で私に優しい言葉や励ましの言葉をくれる。
気づいていたはずなのに、なんで私は素直にその優しさをうけとめようとしなかったのだろう。何に対して、何の意地を張っていたのだろう。こんなに私のことをちゃんと見ててくれて、認めてくれる人はこの世の中にきっと大ちゃん以外いない。そう気づいたころにはきっと手遅れで、後悔が私を襲うのかもしれない。その時の私は気づくことすらできなかったんだよね。
ごめん、大ちゃん。
「N大学、社会福祉学科、4年の千葉ななみです。
本日はよろしくお願い致します」
私は、特別養護老人ホームの介護職員として面接を受けることを決心した。
1週間、みっちり面接指導をしてもらい、面接に臨んでいる。本番は、面接官との相性も良く、話がスムーズにでき、楽しい面接となった。
「まず、志望動機を教えて下さい」
「はい、私は現在、社会福祉士、精神保健福祉士の取得のため、
勉強に励んでおり、資格取得後、
将来特別養護老人ホームの相談員として働くために
まずは入居者様の生活を見たり、感じたりしながら
支援をしていきたいと考えました。〜」
こんな感じだったかな?
悔しいけれど、私はまだ大ちゃんや優香さんみたいに相談員として、施設の即戦力として働いていく力はない。
でも、私にできることってなんだろう?と考えるときっとコツコツいろんな経験を積んでいって、入居者様の思い、介護職員の思いを知っていくこと。そして、まずは信頼を得ることかもしれない。
これから何十年も働いていく中で、自分で自分の道を決めることは沢山ある。慎重になったり、挑戦したりを繰り返さながら、自分の目指すところに辿り着けたなら、それで十分なのかもしれない。
大樹さんと優香さんは私の憧れの人であって、私ではない。今、自分にできることを考えて、自分の足で前に進むしかないんだ。
そう強く感じた。
2017年10月…
やっと実習が終わり残すところ就活、卒論、国試となった。あれから、大ちゃんからたまにLINEは届くが、本当のことを聞くのが怖くて当たり障りない返信を返すだけの日々が続いた。大ちゃんと本心で話せないそんな日々だった。
「そろそろ就活しなきゃね~、ななはどうするの?」
「あ~そうだね…。
一応、施設見学は始めたんだけど、まだ受けたいところがなくてさ」
「そっか~。でも、施設見学行ってるななは偉いよ。
私なんてなんもしてないよ!」
「いやいや、澪ちゃんは国試勉強、超頑張っているじゃん!」
そんな会話をしながら澪ちゃんと私は国試の勉強をしていたが、なかなか集中できない自分もいた。私は、大ちゃんや優香さんのように特別養護老人ホームの生活相談員に就きたいと思っていたが、何か所も見学をするなかで現実を突きつけられていた。
『経験のない子がいきなり相談員ね~』
『入居者の生活何も知らなくて相談乗ろうとしているってことだよね』
そんな心無い言葉ばかり返ってきた。確かにそうかもしれない。それだけすごいことを大ちゃんと優香さんはしているんだよね。2人と比べたら何の取柄もなく、自信もない私だったがどうしても諦めきれなかった。
今日も施設見学で、施設の説明を受けながら施設をぐるっと一周した。そして、相談室に戻り再び腰を下ろすと思いがけない一言を言われた。
『話している感じ、特に千葉さんには生活相談員向いてないと思うよ』
一瞬、時が止まったような気がした。悔しい。1時間会っただけでななの何が分かるって言うの?帰りのバスでボロボロと涙が溢れてきた。否定されるってこんなに傷つくんだ。イライラとしたまま、家に着き崩れ落ちて泣いた。そんな時、私が無我夢中で電話をかけた相手は大ちゃんだった。自分でも驚いたが、大ちゃんに聞いてほしいそう思ったのだ。
「おう。ななみ久しぶり」
「もう悔しい。あんな施設こっちからお断りだ!!」
「元気だな~。全部話してみな。聞いてやるから」
大ちゃんに今の思いを全てぶつけた。大ちゃんは「うん、うん」とうなずきながら話を聞いてくれて、怒っている私をなだめてくれた。
「私絶対、あの人見返してやる!
確かに私も焦っていたのかもしれないよ。
早く大ちゃんや優香さんみたいになりたいから。
でも、正直怖い気持ちもあったの。本当に私なんかにできるのかって。
初めは介護現場の思いとか入居者の気持ちに寄り添ってから
相談員目指した方がななには合ってるのかもしれないって
本当はそう思っていたの」
「ななみ?それめっちゃいい考え方じゃん。
自分のこと見つめられていると思うよ。
…そうだ、ななみ、この曲聴いて?」
♪1日24時間を越えるのがすごく辛い日もある
だけど君の笑顔、思い出すだけで頑張れる
遠い何十億年も前から繋がってたんだね
凸凹道も君と私ならきっと
ずっと笑って歩いていけるよ
だれも知らない遠い昔から 恋人なんだね
ずれてつまずいても 重なり合う
二人だけのメトロノーム 刻んでゆこう
メトロノームだ…。私がMACOちゃんのNewアルバムで1番好きな曲。大ちゃんもそうなのかな?
「俺はななみに笑っていて欲しい。ななみが決めたことは応援する。
迷うな、自分の決めたことなんだから。
俺、辛くてもななみの笑顔思い出すと疲れなんて
一気に吹っ飛ぶんだからな」
「大ちゃん…ななもだよ。大ちゃんの笑顔いつも思い出す。
頑張れるよ」
「そうなのか?一緒だな。ななみのこれからが楽しみだ!!」
あんなに大ちゃんのことを疑って、大ちゃんのことを思って泣いて、大ちゃんに事を考えてしまう自分が嫌なはずなのに、なんでこんなに心が温かくなるんだろう。どんなに私が取り乱したって、大ちゃんはいつも変わらない声で、態度で私に優しい言葉や励ましの言葉をくれる。
気づいていたはずなのに、なんで私は素直にその優しさをうけとめようとしなかったのだろう。何に対して、何の意地を張っていたのだろう。こんなに私のことをちゃんと見ててくれて、認めてくれる人はこの世の中にきっと大ちゃん以外いない。そう気づいたころにはきっと手遅れで、後悔が私を襲うのかもしれない。その時の私は気づくことすらできなかったんだよね。
ごめん、大ちゃん。
「N大学、社会福祉学科、4年の千葉ななみです。
本日はよろしくお願い致します」
私は、特別養護老人ホームの介護職員として面接を受けることを決心した。
1週間、みっちり面接指導をしてもらい、面接に臨んでいる。本番は、面接官との相性も良く、話がスムーズにでき、楽しい面接となった。
「まず、志望動機を教えて下さい」
「はい、私は現在、社会福祉士、精神保健福祉士の取得のため、
勉強に励んでおり、資格取得後、
将来特別養護老人ホームの相談員として働くために
まずは入居者様の生活を見たり、感じたりしながら
支援をしていきたいと考えました。〜」
こんな感じだったかな?
悔しいけれど、私はまだ大ちゃんや優香さんみたいに相談員として、施設の即戦力として働いていく力はない。
でも、私にできることってなんだろう?と考えるときっとコツコツいろんな経験を積んでいって、入居者様の思い、介護職員の思いを知っていくこと。そして、まずは信頼を得ることかもしれない。
これから何十年も働いていく中で、自分で自分の道を決めることは沢山ある。慎重になったり、挑戦したりを繰り返さながら、自分の目指すところに辿り着けたなら、それで十分なのかもしれない。
大樹さんと優香さんは私の憧れの人であって、私ではない。今、自分にできることを考えて、自分の足で前に進むしかないんだ。
そう強く感じた。