2月の花

ずっと長い間そう思って生きてきた。

両親を見るとそれにはすごく納得がいったし、それこそが正しい愛の形だと今も信じている。


けれどそれは私にとってそうなだけであって、きっとそう佑作に説いても、あまり響かないのだろう。



それはかなり落胆することだったけれど、私は、冷えた手と足を、佑作が温めてくれたらいいのに、いつもの安心する笑顔と匂いで、なんて思っている。

それが私に気持ちを自覚させる。


自分ではない人間と共になるということは、理解できないことを求め、求められていることが理解できないことに苦しむことで、

それでも尊敬したり、好きだと思ったりする気持ちが、2人をつなぐのかもしれない。




「……ごめん。でも、佑作、私は佑作が」

「ごめん」




つなぐの、かもしれない。
好きだと、思う気持ちが。




「穂香のこと好きだったけど、別れて、心がつぶれて、時間が経って、やっぱりこっちのほうがいいって、今は思う」


「な……え、私は、そうは思ってないけど、」



佑作と白い息がぶつかる。私は鈍感ではないと思う。嫌な予感を、当てるのがうまい。それを受け入れることがいつか得意になった。あきらめることも。だから初めてだった、こんなにも、予感が外れればいいと思ったのは。



「まだ穂香と付き合ってた時から実は、ずっと好きだって言ってくれる子が居て、本当は、揺れてしまう時があった。俺が振られてから、何回か会ったりご飯いったりして、俺、」




好きになり始めてる、と佑作はちゃんと最後まで言った。




私は言おうとした言葉を止めて、口を噤んだ。粒の大きい雪が、視界に入って鼻にとまった。溶ける、溶けて水滴になる。人の気持ちも、涙も全部それと一緒だ。


溶けたり混ざったり、渇いたりして、形を変えていく。
そして私は改めて思う、一緒に過ごした時間は何だったのかと。


心の中で掘り返す景色がかすんでいく。


けれど佑作は悪くない。だって、短絡的に結論を出して佑作を振ったのは私だ。それで簡単に次へ行けるなんて、という、そんなことではないのだろう。

持続することのほうがずっと難しい。新鮮に好かれ続けるのは、あまりにも完璧で、現実味がないと初めて思う。きっとそれが成り立ち得るのは、私はいつも必死に、佑作を好きでいた場合のみだ。