2月の花

受験の話か、と思って記憶を引っ張りだすと、心当たりがあった。確かにわたしは受験のことを考えたときに、誰かに相談したり迷いを打ち明けたりしたことはなかった。それと恋愛や友情は別物だと思っていたからだ。


「そもそも俺と穂香は、恋愛に対する熱量が違ったんだよ。穂香は自分のことには繊細だけど、他のことにはそうでもなくて、無邪気に俺を突き放したり傷つけたりするんだ、前から」



「ごめ……」



後悔しても遅い。私は、久江の言ったとおり佑作を苦しめていたし、穂香に言われたことと同じことを、佑作にいま言われている。

ひとつひとつ思い出して実感することは、まさに心を砕く作業だった。



「ずっと、なんで、って思いながら、それでも笑って抱き着いてくる穂香は可愛いから付き合い続けてたよ。それなのにいきなり、ろくに納得もさせられずに別れて、俺の気持ちはぼろぼろだよ」


「ごめん、それは、本当に」


「今も言ってることよくわからないよ。もし俺が他の子を可愛いって言ったら、それで別れを決められるほど、俺たちが一緒にいた時間って短かったの」



道路わきに積もった雪がどこまでも続いていて、住宅街の隙間で存在感を放っている。それを見ながら私は一回飲み込んで、違う、とはっきり思う。



「佑作にとっていつも一番でいたいと思うことは、いけないこと?佑作にとって一番だったから、私たち付き合い始めたんでしょう?それが、時間が経つと最初の約束が無かったことみたいになって、なんとなく順位が下がっていくことが、付き合うことじゃないと思う」


「穂香は、相手にばっかり完璧な愛を求めるんだな」


「だって私は佑作以外の誰かをかっこいいなんて、思わないし、思っても言わない」


「それが穂香の表現方法ってだけだろ。俺からしたら、何でたったそれだけで、って思うんだよ。穂香が大学生になって離れ離れになることを、大したことじゃないと思うのと同じで」


「それは」




そうか。

例えば、

全ての人に平等に価値があると仮定すると。

その価値を理解できる人間とできない人間がいて、私たちが一緒になるべきなのは前者の人間で、けれどそれは目に見えて分かることではない。だから態度で示してくれて、いつまでも敬愛してくれて、一番好きだと言ってくれる人が、私の恋人として、あるべき姿であると、