久江の言わんとすることがだんだん分かってきて、なぜ久江のような温厚で断言を避けているような人間に、こんなことを言わせているのだろう、という気持ちがわいてくる。私が、あまりにも鈍感だからだ。気づいた瞬間、ものすごく苦しくて恥ずかしい気持ちがせりあがってきた。
「じゃあ私、たくさん久江のこと傷つけたの?」
「傷ついたよ、当たり前じゃん。何回も何回も。でも結局分かりあいたいって思ってしまうから、教室であんな態度とっておきながら、こうやって会いに来たよ。穂香に分かってもらえるって期待ひっさげて」
風が吹いた後に雲が動いた。少しだけあたりが明るくなって、少しだけ体感温度が上がった気がする。久江がそれを一度だけ見上げてから、私を見て少し笑う。
「私は穂香のこと、何回でも許すよ。だから穂香ももっと私のこと許して」
そこまで言われてようやく私は、なぜこの人のことがずっと好きだったのか気づいた。明るくなってゆく地面が眩しい。私は自分と全然違う思考構造で、私には到底我慢できないようなことを受け入れているこの人の心の広さが、ずっと理解できなくて羨ましかったからだ。
一気に緊張が緩んで、情けない溜息が溢れる。
「じゃあなんでもっとはやく許してくれなかったのー」
「傷ついたからだよ。穂香のこと好きなのに、うざいなんて言われたから、嫌だったの。伝わればいいと思ったんだよ。ちょっと泣かないでよ、キャラじゃないでしょ」
「だってこのまま離れ離れになるかと思ったもんー」
久江は大成功だなーと言いながら笑っている。私は傷つけてごめんね、と謝る。最初からそう言えばいいのに、と久江が困ったように笑う。そしてまた私を許した。
本当によかった、久江がこんなにも優しい人でよかった。がらにもなく鼻をすする私を見て穂香は少しおもしろそうに笑う。
そして私の横を通り過ぎてしゃがみこむと、私が好きだった、黄色い花を抜いた。
あ、と言うと、そのまま私のほうに差し出してくる。
「これ、らっぱすいせん。再生って意味だよ」
そして、穂香なら大丈夫だよ、と言った。
「佑作くんと、仲直りしてきなよ」
「じゃあ私、たくさん久江のこと傷つけたの?」
「傷ついたよ、当たり前じゃん。何回も何回も。でも結局分かりあいたいって思ってしまうから、教室であんな態度とっておきながら、こうやって会いに来たよ。穂香に分かってもらえるって期待ひっさげて」
風が吹いた後に雲が動いた。少しだけあたりが明るくなって、少しだけ体感温度が上がった気がする。久江がそれを一度だけ見上げてから、私を見て少し笑う。
「私は穂香のこと、何回でも許すよ。だから穂香ももっと私のこと許して」
そこまで言われてようやく私は、なぜこの人のことがずっと好きだったのか気づいた。明るくなってゆく地面が眩しい。私は自分と全然違う思考構造で、私には到底我慢できないようなことを受け入れているこの人の心の広さが、ずっと理解できなくて羨ましかったからだ。
一気に緊張が緩んで、情けない溜息が溢れる。
「じゃあなんでもっとはやく許してくれなかったのー」
「傷ついたからだよ。穂香のこと好きなのに、うざいなんて言われたから、嫌だったの。伝わればいいと思ったんだよ。ちょっと泣かないでよ、キャラじゃないでしょ」
「だってこのまま離れ離れになるかと思ったもんー」
久江は大成功だなーと言いながら笑っている。私は傷つけてごめんね、と謝る。最初からそう言えばいいのに、と久江が困ったように笑う。そしてまた私を許した。
本当によかった、久江がこんなにも優しい人でよかった。がらにもなく鼻をすする私を見て穂香は少しおもしろそうに笑う。
そして私の横を通り過ぎてしゃがみこむと、私が好きだった、黄色い花を抜いた。
あ、と言うと、そのまま私のほうに差し出してくる。
「これ、らっぱすいせん。再生って意味だよ」
そして、穂香なら大丈夫だよ、と言った。
「佑作くんと、仲直りしてきなよ」