せめてこのままでいいじゃない、と思う。今までだって不貞行為だったことには変わりない、いっそこれからのほうが、「先生と生徒」っていう罪の肩書きが減っていいはずなのに。
「……お母さんに言う」
きっとそう言えば縋りついてくる。そう思って携帯を開くが一向に愁ちゃんは止めてくれない。黙って俯いている。勢いでかけてしまいそうになるのをどうにか理性が押しとどめる。
こんなひどいやつ、立場も愛も何もかも失ってしまえば、全て壊れてしまえばいいと思うのに、この人の悲しい顔が見たくないと思っている。破壊衝動と愛しい気持ちが混ざって分からなくなっている。分からない、と思った瞬間涙がぼろぼろとこぼれ始めた。
「だめなの?私これからも、ばれないようにできるしっ……」
笑っちゃうなー。
突っ込みどころが多すぎる。奥さんとうまくいってなかったのはセックスレスか子どもができなかったことが原因だったのだろうか。だから別れたいって言いながら私と付き合ったのか。禁忌をおかして。
リスクをたくさん背負って私のことを愛したくせに、責任持てるような顔して、まだ卒業していない私にぬけぬけと別れを申し出る。きっと衝撃だったんだろうな、奥さんに子どもができたとわかった時、高校生には到底想像もつかないような感動が愁ちゃんの体中をめぐったのだろうな。
私みたいなガキに理解を求めたって、私は簡っ単にあなたの社会的地位を奪うことができるのに。そんなのなりふり構ってられないくらい真摯に私に接したいなら、子どもができたからって私を切ろうとするなよ。
不貞行為も生徒対先生っていうのもアレだし、ついでに言うと私、まだ17歳だから完全にアウトだし。教師になるんだったら頭いいでしょう、もっとうまくやれただろう。ああそうかこの人は勉強ができても馬鹿なんだ。
笑っちゃう、なんて思いながら私は泣いている。泣いて愁ちゃんに縋る。これこそ茶番だ。
「思いがけず沙苗のことを好きになったんだ。でも、もうそれじゃダメなんだよ……」
ああなんて弱い人間なんだ、この部屋には弱い人間しかいない。
明日は卒業か。どうでもいいな、卒業する意味などまったくもってなくなった。
「……お母さんに言う」
きっとそう言えば縋りついてくる。そう思って携帯を開くが一向に愁ちゃんは止めてくれない。黙って俯いている。勢いでかけてしまいそうになるのをどうにか理性が押しとどめる。
こんなひどいやつ、立場も愛も何もかも失ってしまえば、全て壊れてしまえばいいと思うのに、この人の悲しい顔が見たくないと思っている。破壊衝動と愛しい気持ちが混ざって分からなくなっている。分からない、と思った瞬間涙がぼろぼろとこぼれ始めた。
「だめなの?私これからも、ばれないようにできるしっ……」
笑っちゃうなー。
突っ込みどころが多すぎる。奥さんとうまくいってなかったのはセックスレスか子どもができなかったことが原因だったのだろうか。だから別れたいって言いながら私と付き合ったのか。禁忌をおかして。
リスクをたくさん背負って私のことを愛したくせに、責任持てるような顔して、まだ卒業していない私にぬけぬけと別れを申し出る。きっと衝撃だったんだろうな、奥さんに子どもができたとわかった時、高校生には到底想像もつかないような感動が愁ちゃんの体中をめぐったのだろうな。
私みたいなガキに理解を求めたって、私は簡っ単にあなたの社会的地位を奪うことができるのに。そんなのなりふり構ってられないくらい真摯に私に接したいなら、子どもができたからって私を切ろうとするなよ。
不貞行為も生徒対先生っていうのもアレだし、ついでに言うと私、まだ17歳だから完全にアウトだし。教師になるんだったら頭いいでしょう、もっとうまくやれただろう。ああそうかこの人は勉強ができても馬鹿なんだ。
笑っちゃう、なんて思いながら私は泣いている。泣いて愁ちゃんに縋る。これこそ茶番だ。
「思いがけず沙苗のことを好きになったんだ。でも、もうそれじゃダメなんだよ……」
ああなんて弱い人間なんだ、この部屋には弱い人間しかいない。
明日は卒業か。どうでもいいな、卒業する意味などまったくもってなくなった。