今日の日直の仕事をすれば、この気まずさが少しはましになるかもしれない。今やってきた陽一はきっと、私に黒板を消そうと誘いに来たのだ。陽一はへらへらしたところがあるから。
けれど陽一は私ではなくももちゃんに話しかける。
「百瀬、悪いけど日直変わってくんね」
「は!?嫌だよめんどくさい、なんでよ」
ももちゃんは驚いたように返事をする。私は心の端っこが、もろく崩れたような気分になる。陽一は一度も私を見ないから、私も陽一を見ない。
「放課後どうしても外せない映画デートあるんだ、頼む」
「余計に嫌だわ!」
「今度百瀬が日直の時変わるし、頼む。そうだ、霜田先輩と2人の時にそうたんって呼んでるの黙っておいてやるから」
「はっ!?なんで知っ」
それだけ言うと陽一は自分の席へ帰っていった。ももちゃんは顔を真っ赤にして口を開けたり閉じたりしている。
「そんなデレデレだったんだ……」
「やめてよ飛鳥まで!」
ももちゃんは恥ずかしそうに突っ伏した後、てか、と言って顔を上げた。まだ少し赤い頬を私の方に向けて、私が聞かれたくない疑問を口にする。
「あいつ、ペアが飛鳥ってこと忘れてんじゃないの。今まで女が居たって飛鳥より優先させたことなかったじゃん。ちょっと聞いてくる」
「やめて」
ももちゃんは私の表情を見て、どこか察したように眉毛を下げた。その目には少しの呆れが浮かんでいる。いつもの夫婦漫才だって言って笑うのだろうか。
「なんかあったの?」
けれどこういう時に限ってももちゃんは異変に鋭いから、女友達のいいところだな、と思って私は目を伏せた。
放課後の教室で、2人でホチキスを鳴らしながら私はももちゃんに初めて陽一と起きたことを打ち明けた。ももちゃんは最初から最後まで、真剣に私の言葉に耳を傾けた。
「え、それじゃあ、夏休みのあいだ一度も会わなかったの?」
「連絡も取ってない」
そう言うとももちゃんが盛大にため息をつく。なんでため息をついたんだろう。ももちゃんも私と同じ気持ちでいるんだろうか。
「酷いね、飛鳥」
「えっ、私?なんで?」
被害者なんだけど、と言うとももちゃんがそれだよ、と呆れた声を出す。もう一度なんで、と言おうとしたときに窓の外から雨の音がすることに気が付いた。
けれど陽一は私ではなくももちゃんに話しかける。
「百瀬、悪いけど日直変わってくんね」
「は!?嫌だよめんどくさい、なんでよ」
ももちゃんは驚いたように返事をする。私は心の端っこが、もろく崩れたような気分になる。陽一は一度も私を見ないから、私も陽一を見ない。
「放課後どうしても外せない映画デートあるんだ、頼む」
「余計に嫌だわ!」
「今度百瀬が日直の時変わるし、頼む。そうだ、霜田先輩と2人の時にそうたんって呼んでるの黙っておいてやるから」
「はっ!?なんで知っ」
それだけ言うと陽一は自分の席へ帰っていった。ももちゃんは顔を真っ赤にして口を開けたり閉じたりしている。
「そんなデレデレだったんだ……」
「やめてよ飛鳥まで!」
ももちゃんは恥ずかしそうに突っ伏した後、てか、と言って顔を上げた。まだ少し赤い頬を私の方に向けて、私が聞かれたくない疑問を口にする。
「あいつ、ペアが飛鳥ってこと忘れてんじゃないの。今まで女が居たって飛鳥より優先させたことなかったじゃん。ちょっと聞いてくる」
「やめて」
ももちゃんは私の表情を見て、どこか察したように眉毛を下げた。その目には少しの呆れが浮かんでいる。いつもの夫婦漫才だって言って笑うのだろうか。
「なんかあったの?」
けれどこういう時に限ってももちゃんは異変に鋭いから、女友達のいいところだな、と思って私は目を伏せた。
放課後の教室で、2人でホチキスを鳴らしながら私はももちゃんに初めて陽一と起きたことを打ち明けた。ももちゃんは最初から最後まで、真剣に私の言葉に耳を傾けた。
「え、それじゃあ、夏休みのあいだ一度も会わなかったの?」
「連絡も取ってない」
そう言うとももちゃんが盛大にため息をつく。なんでため息をついたんだろう。ももちゃんも私と同じ気持ちでいるんだろうか。
「酷いね、飛鳥」
「えっ、私?なんで?」
被害者なんだけど、と言うとももちゃんがそれだよ、と呆れた声を出す。もう一度なんで、と言おうとしたときに窓の外から雨の音がすることに気が付いた。

