きみを守る歌【完結】

即答したのちに自分の決意が心の奥の方へ流れていくのを感じた。だって高校二年生の夏休みなんか、人生に一度しか来ないんだ。それにしてもノリくん甘いもの好きだな。





新学期に入るとすぐに席替えが行われた。先生がずっと忘れてたよゴメンな、と言うと誰かが何度も言っただろ、と先生にからかうようにして言い返している。


私は窓側の前から2番目になって、眠いわりに先生の目がよく届く場所だ、と思うと少し落胆する。だけどももちゃんが隣の席になったのはとてもついている。


私と陽一の席が離されて初めての授業の開始30分後、陽一はのそのそと登校してきた。そして陽一はまるで動揺していないように新しい席へ着く。誰かが伝えていたのかもしれない。


夏休みの間まったく会わなかった彼は、焼けていたわけではないけれどどこか違って見える。ただ一か月近く会っていないことが、今までなかったからだと気づくのには少し時間がかかった。



「今日は飯島が休みだ。じゃあ無断遅刻した芹沢、代わりに日直やれ」



えーーと陽一が言った。その声も久しぶりだな、そして日直ざまあみろ、と思いながら黒板に陽一の名前書かれているのを見ると、隣に有栖川と書かれていて目を見開く。


「えっわたしも日直!?」

「日直はいつも二人だろうが。黒板消して日誌書いて、あとクリーナーの掃除頼むよ。あ、それから今日は放課後作業あるからよろしく」

「遅刻は無断でするもんだろ」

「馬鹿野郎。真面目な理由で遅刻する真面目な生徒はちゃんと学校に連絡してくるんじゃ」



真面目な理由ってなんだよ、と陽一が漏らしている。本当に不真面目だな、と思って横を見るとももちゃんが笑っていた。



「ひゃー、一限が担任だったのが運の尽きだね」



なんで楽しそうなんだ、私も日直だと言うのに。しばらくからかうように私を見てきたももちゃんに、曖昧に笑うとももちゃんが不思議な顔をする。変に思われたかもしれない。

もうそういうんじゃない、と言おうと思ったけれど言えなくて、それが伝わったのか休み時間になると陽一が私たちの席までやってきた。

あんなことを言って以来、陽一とは一度も連絡を取らずに会ってもなかった。離れたいと言った手前、私は身動きができなくなっているのだ。