きみを守る歌【完結】

セイラちゃんが心底白けた表情を見せながら立ち上がると、背後のガールズが一気に静まり返る。私はこの状況を見て、どうしようにもいたたまれなくなったので続いて立ち上がった。


「じゃあ私とノリくんと一緒に出よう。ノリくんの公用車でこれからドライブしよ」

「公用車とかいう言い方しないでください」


ノリくんのつっこみは無視して、セイラちゃんの腕を引っ張って、私たちはファミレスを出た。






「森林浴しよう森林浴!」

「発想が女子高生じゃないですよね」


外を見ながらセイラちゃんがそう吐き捨てる。そんなこと言われると傷つく。私の中でストレス発散とかスッキリという単語からブレインストーミングしてみただけなのに。自然物で癒されよう!的な。


「じゃあビリヤードしよう!!やり方知らないけど」

「S駅で降ろしてください」

「そんな!」


ももちゃんがおとなしく車に乗ったからてっきり遊ぶ気なのかと思っていたから私はショックを受ける。ビリヤード、言ってから思ったけどなかなかいい案なのに!


「勘違いしないでくださいよ。あなたのことなんか大っ嫌いなんですよ」


また言われた、と私は少し身構える。さっきセイラちゃんは攻撃されていたはずなのにそのダメージを引きずらず、すぐに攻撃に戻る。すごいバイタリティだ、戦時中に生き残るタイプだ。

そんな風に尊敬しているのも伝わらず、セイラちゃんはさらに目を鋭くして低い声を出す。



「同情とかうざいんでやめてくださいね。あなたのこと認めたことなんかないし、話したいとも思ってない」

「かつ鍋食べに行かない?」

「いやそういう太りそうなのは……って人の話聞きなさいよ!」


それも駄目かー。そうか、セイラちゃんは身を削る思いで今のモデルのような体型になったんだ、と思うとダイエットとか食事管理はきちっとやっているのだろう。


「なんでたったの一年弱で、20キロもやせようと思えたの?」

「だって、デブな私には人権が無いんですよ」

「何てこと言うの!?」

「無いも同然でした。彼氏はおろか、モテるはずもなく友達も限られてくる。クラスメイトにはいつも女子ではない何かを見るように扱われて、数少ない友達と一緒にいるうちに、その友達でさえ自分を見下していることが透けて見える」