きみを守る歌【完結】

「え、なになに」

「セイラのマジでヤバい写真。友達が送ってくれたんだけど」



ま……セイラちゃんのマジでヤバい写真が出回ってるの!?もう盗み聞きに対する罪悪感はほぼなくなっていて、ただ’マジでヤバい写真’ってそういうことなのかと焦る気持ちが募る。

マジでヤバいってそういうマジでヤバいなのかな……!?陽一のこと好きとか散々言っておいて……!?恐る恐る振り返ると、4人の女の子が机の上に出された一つのスマホに顔を寄せていて、私の視線になど気づいていなかった。

それは良かったけど、4つの頭を寄せ合っているから、中身は見えない。当然か、そこまで覗いちゃ駄目だ。

そう思って向き直ると、私は息が止まる思いをする。


トイレに行って反対側から戻ってきたらしいセイラちゃんと目が合ったのだ。



「……はっ」


不機嫌そうに顔を歪めるセイラちゃんを一瞬で引っ張って、私の隣に座らせる。振り返ると、机の上の画面に集中しているセイラちゃんの友達は誰も気が付いていなかった。セーフ。



「何するん、」


「ヤバ―――!!」



セイラちゃんの不機嫌そうな低い声は、私の背後から聞こえてきた奇声に近い叫び声にかき消される。振り返ろうとするセイラちゃんを引き留めて私は「シッ」と言った。


ソファの背もたれが高いから、セイラちゃんがここに座っていることはまだ、背後にいる集団の誰も気が付いていないだろう。



「何これ、卒アル!?」

「そう!これ撮った直後に転校したらしいんだけど」


なんだ卒アルか。ヤバい写真って言ってたけど全然やばくないじゃん。そう思ってセイラちゃんを見ると、なぜかセイラちゃんは目を見開いて絶句している。



「超デブじゃん!!」



あ、そういうこと、と私は納得したのち、確かにこれは言われたくないだろうな、と思った。


ノリくんは話の流れにも、セイラちゃんの美形にもまったく興味がなさそうにコーンフレークを口に運んでいる。



「顎の肉やばすぎー!」

「え、整形?」



私の横でセイラちゃんが舌打ちをした。さっきのショックはすぐに怒りへ変わったようだ。さすがだな、よく知らない年上に全力で悪意をぶつけてくるだけはある。


「何キロ痩せたの?」

「10ヶ月で21キロ」

「ひえええぇぇぇ」