きみを守る歌【完結】

「だから私の言うこと、すぐに信じたんですよ。陽一先輩が私のこと見捨てて飛鳥先輩のもとへ行った、っていうことが、あり得ることだと思ってるから」


「……あり得るありえない、じゃないでしょ。あんな風に連絡されたら誰だって放っておけないよ」


「そのわりに、信じ切ってた、って感じの顔してたじゃないですかぁ。ショック丸出しの」






全部分かってて、全部見てたんだ。そう思うとセイラちゃんがものすごく怖い存在に思えてくる。そして私の全てを見透かされているような気がする。私ですら、知らなかったことも含めて。


目が合うとセイラちゃんは、苦しそうな顔してますね、と言って笑った。



「本当は分かってるんでしょ?全部、陽一先輩から離れれば解決する問題だって」



この人早くトイレから出ていかないかな、とはらわたが煮えくり返る思いをしつつも、私も動くことができない。見当違いなことを言われているようで、それでいて私は言い返す言葉を見つけられない。


ただ、否定することしか。



「陽一先輩のこと好きだっていう勇気がない人には、そっちの方がいいと思いますよぉ」


「好きじゃ、ない」


「じゃあその、幼馴染の呪縛から解放してあげなきゃ」


「なによ、それ」


「陽一先輩、全部知ってますよ」




ああこの人は私のことが嫌いなんだ、と久しぶりに実感する。変にいじめられても面と向かって悪口を言われても、考えてることが分からないなぁくらいにしか思って来なかった。

だけどセイラちゃんの言葉にはすべて熱が込められていて、その目的は、私を論破し、傷つけることなのだというのがよく見える。

嫌いという理由しか、こんな熱量に変わり得ない、とすら思う。




「あなたがせこせこ幼馴染っていう関係に縋りついてることも、怖がって距離を詰められないけど本当はかなり依存してることも。だから可哀想なあなたから離れられない」




その言葉に心のどこかが打ち砕かれたような気になって、同時にももちゃんがいつか私に言ったことを思い出す。陽一を恋愛対象にしまいと意識してるのは、私のほうだと。

あれはつまり、私のせいで、私と陽一の関係がただの幼馴染にはなれないのだと言っていた。


陽一が、私が依存していることを、知っている―――?