きみを守る歌【完結】

ものすごく正論だ、と思いながら私はだけどももちゃんの態度が少しおかしい気がしていた。ももちゃんに対してだけは少し敏感なのかもしれない、いつも一緒にいるせいだろうか分からないけど。


「そうですか、でもあなたを見たと言ったらすぐにやってきそうですね」

「言わないでくださいよ。今日は飛鳥と花火見に来たんで、邪魔しないでください」

「そうですか」


ノリくんはいまいち納得していないように返事をしながら、なぜか私とももちゃんの分のたませんの料金を支払っている。私は少し慣れたけれどももちゃんが焦ったように声を上げた。


「ちょっといいですよ!そんなことされても私、」

「あの、ももちゃん、もし行きたかったら行ってきていいよ」

「飛鳥まで何言ってんの。そしたら飛鳥はどうすんの」


じっと私の顔を見返したももちゃんの瞳を覗いて、既視感がした。


「私はノリくんと回るから」

「は!?嫌ですよ」

「ノリくん本当に空気読め!」

「……分かりました」


ノリくんがももちゃんにピンク色の袋に入った綿菓子を渡した。プリントされているイラストは私がそれこそ3歳くらいの時に、休日の朝にやっていたアニメの女の子だ。

それを見てそうかノリくんとは11歳離れているんだ、ということを思い出した。


「さっき言ってた、よくない人って霜田先輩のことだよね?」

「そうだけど……」

「もしウザかったら、この綿菓子の袋で往復ビンタしれやればいいじゃん」


そしたらまた惚れられるだろうけど。そこは言わずに笑うと、ももちゃんがまた迷ったような困ったような顔をする。


「私のことは気にしないで、行ってきて。ももちゃん大好き」

「……分かった」


そう言って歩いて行くももちゃんの後ろ姿を見ながら、いつかもこんなことがあったなぁと思うと恥ずかしくなってきた。霜田先輩がマトモな人だとはまだ思えないが、ももちゃんの気持ちがどこかで私に伝わってくるから、仕方ない。


「はあ、何か食べますか。花火まであと30分くらいありますけど」

「あ、さっきのは言葉の綾だからノリくん行っていいよ。私が一人って言うとももちゃん心配するから言っただけで」

「こんな人ごみをあなたみたいな非力で頭の悪い女子高生が一人でいたら危ないでしょ」