きみを守る歌【完結】

「テンション上がるね!!都会のお祭りっていいね!!」

「そんな感性持ってるのはこの作者世界で飛鳥だけだろうね」

「何の話?」

「何でもない」


夕方5時ごろに会場に着くと、もうすでにかなりの人がいて、座り込んでいたり出店に並んでいたりして賑わっている。人ごみが嫌いだというももちゃんが、あーむりカフェ入ろ、と言ったので向かった喫茶店は満席だった。


うへ、と言いながら2人で冷凍パインの店に並んだ。ももちゃんは体育祭といいこの花火大会といい、きっとお祭りごとが好きではないんだと思う。

だけどいつも私の近くに居て、味方でいてくれるももちゃんに私は甘えまくっている。何か私も力になれたらな、と思った。


少しずつ日没が近づいている。そんな中で歩き回ったり座ったりしながら適当なことを話すのは、いつも通りだけど少しの非日常が混ざって、またわくわくする。



「ももちゃんは最近良い人いないの?」

「えー……あー……」

「いるんだ!!」

「結論が早い!いやーいい人はいないかな……良い人は」

「よくない人がいるんだね!!」


ももちゃんが意味深に溜息をつく。その話の続きを聞こうと思ったら、自分がたませんの長い列に並んでいることなど忘れそうだった。


ふと横の店を見ると、アニメやサンリオなどのいろんなキャラクターが袋にプリントされた綿菓子屋があった。昔はよく欲しがったなぁ、と思ってみていると、小さい子ども連れのお客さんに混ざって、綿菓子の店のイメージにまったくそぐわないスーツ姿が並んでいるのが見える。


こんな暑いのにスーツ、と思うだけで卒倒しそうだが、バチバチに鍛えているくせに細めのスーツに身を包んでいるせいではちきれそうな二の腕、には見覚えがある。



「ノリくん!?」

「頭悪そうな声で呼んでんじゃねぇよブス!……って、あなたでしたか」

「綿菓子とノリくんっていう単語にまるで関連性を見いだせないんだけど!?」



ノリくんが綿菓子屋の列の中で明らかに浮いている!売る側としているなら納得だけど、でもスーツはおかしい。



「はあ、その貧相な視野には合掌しておきます」

「あれ、霜田先輩と一緒?今日は」

「はい。坊ちゃんは並ぶのが嫌だと言って日陰で休んでおります」

「相変わらずヒドイ人だな……」