セイラちゃんの目もそうだった、と思うと、真剣な瞳とは黒く、吸い込まれるような力を持っているんだ、ということを知る。
「……何の顔、って」
「最近になって、そんな顔すること多くなったよね」
何を知っていて、何を聞くつもりでそんなことを言うのだろう。陽一の思考を測りかねるといつも、私は返事をするのがこわくなる。
気づくと陽一の顔が近づいてきていた。
「飛鳥、俺はいつも本当のこと―――」
なんだ、と思ったときに、ジリリリリリ、という黒電話の音に我に返る。私のじゃない、と思うと陽一が迷惑そうに目を細めて、私から距離をとった。
陽一の携帯が鳴ったらしい。
「出てもいい?」
「いや、なんで許可とんの?どうぞ」
それもそうだな、と陽一は笑って電話をとる。その瞬間の画面を見てしまった。セイラちゃん、という登録名が表示されていた。
「もしもし?」
何を話しているんだろう、とか、思うのが嫌だ。不快になったり、不安になったりすることが嫌だ。陽一といるとなぜか最近、そんな気持ちになってばかりなのが嫌だ。こんな気持ちになるのは嫌だ。
もっと楽しい気持ちで、その人のことしか見えなくて、毎日幸せに生活したい。
―
「うん、うん、また連絡するわ」
陽一が電話を切るタイミングで私もクレープを食べ終わる。おいしかったけど喉が渇いたな、と思いながらペットボトルを取り出す。ずっと鞄の中に入っていたそれはぬるくて、喉を通る心地があまりよくなかった。
「セイラちゃんの声って甲高いのな。聞こえてた?」
「聞こえなかったよ。セイラちゃんとも付き合ってんの?」
「付き合ってねーよ。あ、でも花火大会誘われた」
「へえ。いいじゃん、行ってこれば」
喉の奥がむかむかと不愉快に粟立つ気がするのは、ぬるいウーロン茶のせいだ。
「そうだなー」
突き放す勇気がないだけだ、という言葉がまた頭の中に降ってくる。
花火大会の当日には、学校の最寄り駅からすでになんだか賑わっている気配がしていた。カップルは相変わらず多い気がするし、女の子たちはきれいにメイクをしていたり、浴衣を着ていたりする。
その雰囲気が余計に私を高揚させる。
「うわああああああ人が多いねももちゃん!!」
「飛鳥の声もでかいね」
「……何の顔、って」
「最近になって、そんな顔すること多くなったよね」
何を知っていて、何を聞くつもりでそんなことを言うのだろう。陽一の思考を測りかねるといつも、私は返事をするのがこわくなる。
気づくと陽一の顔が近づいてきていた。
「飛鳥、俺はいつも本当のこと―――」
なんだ、と思ったときに、ジリリリリリ、という黒電話の音に我に返る。私のじゃない、と思うと陽一が迷惑そうに目を細めて、私から距離をとった。
陽一の携帯が鳴ったらしい。
「出てもいい?」
「いや、なんで許可とんの?どうぞ」
それもそうだな、と陽一は笑って電話をとる。その瞬間の画面を見てしまった。セイラちゃん、という登録名が表示されていた。
「もしもし?」
何を話しているんだろう、とか、思うのが嫌だ。不快になったり、不安になったりすることが嫌だ。陽一といるとなぜか最近、そんな気持ちになってばかりなのが嫌だ。こんな気持ちになるのは嫌だ。
もっと楽しい気持ちで、その人のことしか見えなくて、毎日幸せに生活したい。
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「うん、うん、また連絡するわ」
陽一が電話を切るタイミングで私もクレープを食べ終わる。おいしかったけど喉が渇いたな、と思いながらペットボトルを取り出す。ずっと鞄の中に入っていたそれはぬるくて、喉を通る心地があまりよくなかった。
「セイラちゃんの声って甲高いのな。聞こえてた?」
「聞こえなかったよ。セイラちゃんとも付き合ってんの?」
「付き合ってねーよ。あ、でも花火大会誘われた」
「へえ。いいじゃん、行ってこれば」
喉の奥がむかむかと不愉快に粟立つ気がするのは、ぬるいウーロン茶のせいだ。
「そうだなー」
突き放す勇気がないだけだ、という言葉がまた頭の中に降ってくる。
花火大会の当日には、学校の最寄り駅からすでになんだか賑わっている気配がしていた。カップルは相変わらず多い気がするし、女の子たちはきれいにメイクをしていたり、浴衣を着ていたりする。
その雰囲気が余計に私を高揚させる。
「うわああああああ人が多いねももちゃん!!」
「飛鳥の声もでかいね」

