きみを守る歌【完結】

そうつっこんだらすぐにももちゃんは教室から出て行く。心なしか満足しているように見えたのは、今日の仕事(ツッコミ)は全うしたな、みたいなノリだろうか。

ああ最近はバイトが流行ってるの?私も働いたほうがいいんだろうか、と思うと少し楽しくなってくる。こないだの面談で、お願いだからこれ以上成績を下げないでくださいと教師に懇願されたから、絶対にお母さんに許してもらえないけど。


「じゃー行くか。うわ、飛鳥と帰るの久しぶりだ」

「陽一はバイトしてるくせに放課後暇なの?」

「毎日してるわけじゃないしさー」


そんなことを話しながら教室を出るとき、まだ少しだけ注目されている、気がする。けれど陽一がまるで気にした素振りを見せないので、私がうだうだ気にしたらすごくださいと思って堪える。


学校と駅の中間地点くらいにあるモールに入っているクレープ屋には私と陽一のような学生がたくさんいて、流行っているんだなあ、とフードコートを見渡して思う。何種類もあるクレープを端から順番に吟味するのは本当に心が浮き上がる作業だ。全部キラキラしてるしおいしそう。


「俺、ツナポテトにしよ」

「お惣菜クレープとか邪道じゃん」

「いや、これうまいんだよ。マジではまるからおすすめ」


ええ、と思いながら私が決めると、陽一は甘そう、と困ったように笑いながら注文した。ああこんな顔を見るのは確かに久しぶりだな、といちいち口にはしないことを思う。


クレープを買った後、座らずに駅まで歩くことにした。

遠くの地面に陽炎が見えて、うやむやになっているなあ、と思うとそれは私と陽一のことであるように思えてくる。私たちはあの張り紙事件の時に言い合って仲直りせず、陽一が私を庇って、そのまま今一緒に歩いている。これって、何だろう。

どういう形なんだろう。


「なんて言ったの?……江渡さんに」

「飛鳥の机にカンペ貼った人?簡単だよ、鑑定出したからバレるのは時間の問題だって言った」

「出したの!?」

「出すわけないだろ」


はは、と笑った後に陽一はクレープをかじる。



「そんくらい俺は本気で飛鳥の疑いを晴らすし、姑息にはめるやつのことは許さないって言ったら認めた」


「な……んで、そんな」


「飛鳥こそ。ノリくんと会ってるなんて聞いてないからびびったんだけど」