きみを守る歌【完結】

そして江渡さんが停学になったあとも、私への嫌がらせは少しずつ続いた。そして私は江渡さんが言っていたことを、実感と共に心の中で認める。


私は私ができる方法で、事態に収拾をつけなければいけない。そう思ったはずなのに、結局私は何もわかっていなかったことを、理解するのはもう少し後の話だ。




クラスの順位だとか平均点だとかいうものにはすべて目を閉じ耳を塞ぎ、私は無事全教科のテスト返却を平和に終わらせることができた。



「赤・点・回・避!!」


英語だって48点も取れたし最高!と踊りそうに喜んでいるとももちゃんが白けた表情を私に向けていることに気づく。


「え、ももちゃん嬉しくないの?私と花火大会行けるのに」

「そうか、48点は喜ぶ点数なのか……」

「何も聞こえないよ!?」

「相変わらず食い気味だな!近いわ」


近づけた顔をぐいっと押しやられた時にももちゃんのテストが視界に入る。私の目は80点以上を識別できないようにできているため点数は理解できなかった。

そう伝えると、真顔でそういうこと言うのやめて、と引いた声をかけられる。


「これで朝から場所取り行けるよ!」

「誰が朝から場所取るか!しかも午前中授業だから!」

「俺も花火大会行くー」


最高に白けた顔をして顔を上げると陽一が少し怯んだ顔をした。びびったか、セイラちゃんをお手本にしてみたわ。これで人の話に入ってくる癖が治ればいい。


「陽一は補習でしょ?来る頃には私たちのこと見つけられないと思うけど頑張れ」

「飛鳥が通るようなテストで俺が赤点なわけないだろ?」


言い返す前にテストの結果一覧を目の前につきつけられる。なんだか4教科くらい点数が三桁に見えるけど、テストの点で三桁になるはずがないから見間違えだろう。



「とにかく全力で打ちあがりたい、赤点回避のお祝いがしたい」

「じゃー今日の帰りにクレープ行こうぜ」

「クレープ!」


もう自制心がきかないレベルで脳内がクレープに埋め尽くされる。こないだは気を強くして断ったけどっ……もうテストないし……っ!


「ももちゃんも行こうよ!」

「私バイトだから無理」

「バイト辞めて!」

「メンヘラ彼氏か!」