きみを守る歌【完結】



お茶漬けに罪の気配を含ませるな!と思いつつブスのフルコース、という字面になかなか衝撃を受けている。想像するだけで泣けてくる、健気でスゴイことじゃないかよ、と。


「なんでそんなにも底意地が悪いのに陽一のことが好きなの?」

「は?関係ないでしょ」

「ここまでしといて無関係宣告!?」


思わずつっこんでしまうと教室の奥の方にセイラちゃんを見つけたときと同じように、はっきりと白けた目を向けられる。

もう無理だ、どう行っても敵視される。私はこんな風になりたくて今日、セイラちゃんを呼んだわけじゃない。



「陽一のことが好きなら、もっと正攻法でいった方がいいよ」


「はあ?」



私は今日、これ以上私が苦しくならないために、来たのだ。





「私を貶めて陽一に近づくのって難しいでしょ?だからもっとストレートに行って、陽一と付き合って、私と距離置いて、って言えばいい」

「……正論言えばいいと、」

「私が陽一とよく一緒にいるのはね、幼馴染だからだよ。ただ放っておけないからだよ」



私の言葉に納得していないのかどうなのか、判断できないような強いまなざしでじっとセイラちゃんに見られている。大きな迫力のある目と綺麗な茶色の眉毛には、吸い込まれてしまいそうな圧倒される雰囲気がある。



「先輩が陽一先輩の前から失せてくれるっていう手段はないんですか」



その物言いに悪気があるのかないのかはもはや判断ができない、と彼女の真剣な目を見てふと思う。



「それじゃ私に嫌がらせして退散させるのと同じじゃん。私は陽一の恋人じゃないんだから、邪魔じゃないって言ってるの。むしろ陽一に恋人ができたら自然に離れることになると思う」



むしろ私はそれを望んでいる、と思う。どこかで、心の全部じゃないとしても、だ。この先どうにかなるとしたら、それが一番濃厚である、とも思う。


それを口にしてしまうことは少し楽になると思った。そして同時に本当のことでもある。あの遊び人が本気になれるかどうかは置いておいて、もしそんな子ができたとしたら、きっとそれは圧倒的だ。幼馴染であることを理由に守り続けないといけない存在なんて、非じゃないはずだ。