きみを守る歌【完結】

というかこの人がノリくんに見えてくる。それも在学時代の。本当に口が悪いのね、と言ってやろうか迷ったけれど意味がなさそうなのでやめる。

それくらい遠くへ行かないと本性を出してくれないかと思っていたけど、そこまでガードが固くないらしい。



「メールじゃ敬語だったじゃん」

「あ――――、そうでしたぁっ、けえぇー?」

「この女、」

「ももちゃん、落ち着いて」


私の一歩前に出るももちゃんの腕を掴んで落ち着かせる。

スゴイ違いだな、というよりも私は実際にセイラちゃんと話すのが初めてだから、さっきの学校でのキャラを一瞬しか見ていない。したがってこっちの本性がインプットされるぞどうしても。

学校で完璧なアイドルを演じられたら頭の中に磁場が発生して解読不可能になるぞ。


「いくら陽一のことが好きだからって、私にあんなことする必要ないじゃん」

「はぁー、もっと建設的に生きろって?お顔が残念な人ほど理屈と理想で生きたがるって本当なんですねぇ」

「この女!!!」

「飛鳥、落ち着け!」


自分が言ったこと忘れたのか!!とももちゃんに凄まれて私も震える拳をしまう。そうだった、千年アイドルの顔を殴って気を済ませたいわけじゃない。


「セイラちゃんがやってくれたことがどの程度なのかは知らないけど、あの二股騒動がきっかけで、多方向から嫌がらせを受けて困ってるの」

「へぇー。おめでとうございます、嫌われてることに気づけたんですね」

「はっ!?とりあえず、こないだの二股騒動を謝って嘘だったと公言するか、もうこの件に一切関与しないで、静かに反省するかのどっちかにして」

「へへ、馬鹿みたい」

「この、女!!!」

「飛鳥、手は出すな!」


ももちゃんに振りかぶった右腕を掴まれて我に返る。あぶないあぶない、と思いながら深呼吸して自分を落ち着かせる。ああ今日ももちゃんについてきてもらえてよかった。



「先輩ぶって馬鹿みたい。まあ、どうせ無駄だけど」

「何が無駄なのよ」



口は悪いは声は思いの外低いわ散々だけれど、しかし話しているのはまぎれもない美少女だ、と思うと心の底から悔しい。



「だってぇ、ブスが作ったフルコースよりも美人のお茶漬けって言うじゃないですか?だからブスの正論よりもセイラの嘘のほうが真実になるの」


「お茶漬けと嘘を一緒にすんなよ!」