『お前を守るのは、いつも俺だよ』
できることならもっと、気づかないふりをしていたい。
テストが終わってから、帰り始める生徒を横目に私は1年生の教室へ向かった。スリッパの色が違うから浮いているのか、こないだの騒動の人間だと周りから認識されているのかは分からないけれど、1年生たちはなかなか異質なものを見る目で私とももちゃんを見てくる。
「セイラちゃんって子、呼んで」
窓側の席でやはり異なるオーラを放っている彼女を視界に入れながら、私は教室のドア付近にいる生徒にそう声をかける。
誰が呼ぶかババア!と怒鳴られなかったので少し安堵する。最近私の周りにはこんな人間が多いからな。警戒せずにはいられないのだ。
セイラちゃんは私のことを認識すると、全力で白けた顔をした。きっと私に気づかれるようにやっている、と思った次の瞬間、表情をいつものアイドルに切り替える。
「あのー、私がセイラですけどぉ……」
ヒクッとももちゃんの頬が痙攣したのが分かる。ももちゃんの気持ちは大いに分かる。ここで話をすれば私よりも先にももちゃんがキレそうだ。はいはい、まあ肉食系美少女の鉄板オチですけどね。
「ちょっと話あるから、行こうか」
「はぁ―い……」
きっとアイドルで通っている彼女は、クラスメイトやその他大勢の前ではキャラを崩してはいけないのだろう。アイドルって大変な生き物だ、と思いながら校舎を出て歩いて行くと、人が減ってきたあたりで舌打ちが聞こえた。
「どこまで歩かせるんだよ」
というかなぜ私がセイラちゃんの立場に気を使わなければいけないんだ。私はそもそも疲弊している側なんだ。そう思いながらも私はももちゃんと、今日のテストについてぽつぽつと話して歩く。
「聞ーてんのかよ」
鞄の紐を強く引かれて振り返ると、おやじのような低い声でそう凄んできたのはまさかのセイラちゃんだった。
「あ、行先聞いてる?いつもノリくんと行ってたファミレスだよ。私の家の近くの」
「はあ?なんでそんな遠いところまで連れてくんだよ!」
「えっ、でもノリくんとの写真撮るために来てたよね?別に遠くないのかと思ってた」
「あー?」
できることならもっと、気づかないふりをしていたい。
テストが終わってから、帰り始める生徒を横目に私は1年生の教室へ向かった。スリッパの色が違うから浮いているのか、こないだの騒動の人間だと周りから認識されているのかは分からないけれど、1年生たちはなかなか異質なものを見る目で私とももちゃんを見てくる。
「セイラちゃんって子、呼んで」
窓側の席でやはり異なるオーラを放っている彼女を視界に入れながら、私は教室のドア付近にいる生徒にそう声をかける。
誰が呼ぶかババア!と怒鳴られなかったので少し安堵する。最近私の周りにはこんな人間が多いからな。警戒せずにはいられないのだ。
セイラちゃんは私のことを認識すると、全力で白けた顔をした。きっと私に気づかれるようにやっている、と思った次の瞬間、表情をいつものアイドルに切り替える。
「あのー、私がセイラですけどぉ……」
ヒクッとももちゃんの頬が痙攣したのが分かる。ももちゃんの気持ちは大いに分かる。ここで話をすれば私よりも先にももちゃんがキレそうだ。はいはい、まあ肉食系美少女の鉄板オチですけどね。
「ちょっと話あるから、行こうか」
「はぁ―い……」
きっとアイドルで通っている彼女は、クラスメイトやその他大勢の前ではキャラを崩してはいけないのだろう。アイドルって大変な生き物だ、と思いながら校舎を出て歩いて行くと、人が減ってきたあたりで舌打ちが聞こえた。
「どこまで歩かせるんだよ」
というかなぜ私がセイラちゃんの立場に気を使わなければいけないんだ。私はそもそも疲弊している側なんだ。そう思いながらも私はももちゃんと、今日のテストについてぽつぽつと話して歩く。
「聞ーてんのかよ」
鞄の紐を強く引かれて振り返ると、おやじのような低い声でそう凄んできたのはまさかのセイラちゃんだった。
「あ、行先聞いてる?いつもノリくんと行ってたファミレスだよ。私の家の近くの」
「はあ?なんでそんな遠いところまで連れてくんだよ!」
「えっ、でもノリくんとの写真撮るために来てたよね?別に遠くないのかと思ってた」
「あー?」