本当に散々だ、とため息をつく。私はただ、お祭りのために勉強をしていただけなのに。どうしてこんなことに巻き込まれているのだろう、というかダイレクトで被害者にならなければいけないんだろう。

とにかくこんな空気の悪そうな部屋一瞬でも早く出たい、と思いながら私が拳を握りしめていると、私をカンニング犯だと叫んだ女の先生が後ろから「いけませんよ!」と語気を強くして言った。



「はい?」

「こうやってみすみす逃がしたら、こんなことが蔓延します!これはちゃんと決着をつけないと」



理解しようと努めながら話を聞いているはずなのに、目の前の先生が、何を言っているのか分からない。えっとつまり、やっていないことが蔓延する?私はやっていないもんね?えっと、他人にカンニングなすりつけるゲームが蔓延するということですかね?ここは貶め合いパラダイス学園だったの?

私よりも頭の回転が速いらしい生徒指導の先生はそうですねぇと頷く。


「確かに、有栖川さんがやってないにしても、これからカンニングをするたびに自分がやったんじゃないって生徒が出てきたら、と思うとねえ」

「でしょう?だからこの事件にはちゃんと決着をつけないと生徒に示しがつかないんです。有栖川さんあなた、本当はやったんでしょう?」

「……はっ!?」


ふんふん、と話を聞きながらようやく話の筋を理解すると同時に女の先生が私にいっそ質問ではない態度で質問をしてくる。これ、ノリくんに教えてもらった付加疑問文ってやつじゃ?

『This is an amazing beautiful alligator, isn't it?』

ああこんな構文思い出してる場合じゃない。


つまりここで私を見逃したら、今後カンペをテスト中に摘発するたびに、「誰かになすりつけられたんです!」と言い逃れようとする生徒が増えるから困るってことか。だから私を見逃すわけにはいかず、何ならいっそ重要なのは真実ではなく、「カンニングをして言い逃れられなかった生徒」を戒めに公開することであるいうことか。


「えっと……?先生は私の字とこのカンペを見比べたりしたんですか?」