「えっそんな感じだった?ただ可愛いなあと思ったけど」

「他人の悪意にめちゃくちゃ鈍感な感じいいよね。そういうとこ好き」

「私もももちゃんのこと好きだよ!?」


また食い気味だな、とももちゃんが笑う。好きな人にはいつだって全力で好きだと伝えるというのは私のモットーだ。とかいいつつ実践できているかどうか知らないけど。


「でもちょっと気を付けた方がいいかもね」

「え、なんで?この手紙には真実は何も書かれてないのに?」

「あーなんていうか、ことが大きくなったら面倒じゃん。ほら、女子ってお祭り騒ぎがしたくて、真実はどうでもいいみたいな節があるでしょ」


なんだそれ、と思いながらあまり実感が沸かず、私はあまり気にしないことにした。というか、気を付ける方法が分からない。陽一に近づきすぎない、とか?

自分の席に戻ると陽一が目が合った。


「なんだよ」

「私たちって近くにいすぎかな??」

「なんだよ急に。全然そんなことないだろ」


その通りだ。ただ幼馴染で、2年連続で同じクラスなだけだ。帰りは別々に登校しているし、朝だって今日はたまたま会ったから一緒に来たけど、陽一は遅刻魔だからいつものことではない。

昨日の陽一とセイラちゃんのやりとりを思い出して考える。それで付き合ってると勘違いされるってことはやっぱり、


「貴様のせいだアアアァ」

「何が・何で・どのようにだよ!人につかみかかる前に順序立てて説明しろ!」

「理系ぶってんなよ!!」

「俺は物事の道理を説いただけだ!」


確かに、陽一には何も説明していないな、と気づいて攻撃をやめる。言おうか、と思ってからいやいや、と思いなおす。

陽一の世話にばかりなるわけにはいかないし、こんなの、放っておいても大丈夫だろう。




「馬鹿女アアァ!!「おかし」は面白いって意味じゃねえって何百回説明させる気だ!?おかしが可笑しいって訳せたら全・古文のストーリーが変わるんだよ!!」

「はっ、はひぃ」


そして今日も同じように私は悲鳴をあげている。どんなに優しく教えて、とお願いしたところで、ノリくんは私の頭の悪さには我慢ができないらしい。

ノリくんが机を叩いた音であたりが静まり返り、困ったようにウエイトレスさんがやってくる。


「すみませんお客様、他のお客様が驚かれますので……」