夏休み目前にしてようやく冷房が入ったことで、教室の中はまあまあ過ごしやすい。席替えのポジションによっては半袖のカッターシャツでは肌寒いくらいだ。

次は窓際の席がいいなあ。外、炎天下で汗を掻きながら体育のサッカーを行う生徒をこの場所から眺めて授業時間を食いつぶしたい。そしてイケメン探しをする、これでこそ夏。


ももちゃんと夏祭りに行く計画も立てなければ、イケメンを探しに。


「自販機寄ってくね!」

「はーい」


体育終わり、ももちゃんと別れてひとり自販機へ向かう。中庭の向こう側の、購買の前にしか自販機がないなんて不便だなあ、と思いながらパックのミックスオレを購入する。

あーあ教室の外は暑いなあ、と思って屈んでジュースを取り出したのち、振り返るとぶつかりそうなくらいの至近距離で奴が立っていた。


「……っ!!」

「飛鳥って驚くと声でなくなるタイプだよね、痴漢に遭ったときとか心配だな」

「私も陽一のこと心配。痴漢で捕まるんじゃないかって」


いや、本当に近いな、と思って押そうと思うと陽一の肩が私のよりもかなり高い位置にあることを改めて自覚する。背が高いなあ、本当に違う生き物なんだなあ、と。

中学1年生の時なんかはまだ私のほうが高かった。だからか陽一のことが男の子だとは知っていたけれど男の人だと意識したことはあまりなくて、それでいつもいつも一緒に居た。今よりも、精神的な意味で。


「さっき家庭科の先生が内緒でアイスくれたんだよ。そしたら窓から飛鳥が見えたから、分けてあげようと思って」

「えー!?ずるい、家庭科の先生までたらし込んでるなんて」

「家庭科の先生思い出して?54歳の男の人だよ?」


陽一について調理室に入ると、机の上に溶けはじめのカップアイスが2つ置いてある。


「ね。なぜか2個くれたんだけど、ほら、男の子ってお腹が弱い生き物だから」

「……アイス食べたら帰る」


日差しがダイレクトに入り込んでくる、広い調理室には私と陽一のほかには誰もいない。暑いけど、冷たくておいしい。


「んーおいしい」

「体育さぼって先生の荷物運びしたかいあったな」

「何やってんだよ」

「や、学校ついたら半端な時間だったからさ」