「本当に坊ちゃんが大事でいつも付き添ってんなら、駄目なことは駄目って教えなさいよ!こんな理屈は小学生でもわかるぞ!ノリくんほどバキバキマッチョなら、逆らわれたら力でねじ伏せられるだろ!」


ここまでまくし立ててから、陽一が録音しろと言った意味に気が付いたけれど、目の前で2人が縮こまるのを見ると、このデータは必要ない気がしてくる。まあ明日下手に言い訳でもしようもんなら先生に提出してやる、ってつもりでまだ少し残しておこう。


「ほらっ、かつ重あげるから反省してこいよ!」





その後霜田先輩やその周りは停学処分をくらい、ノリくんは退学になった。逆じゃないのか!と思ったら、ノリくんは何と10歳も年齢を詐称して実は大学まで卒業していることがバレて退学になったらしい。どうやったらそんなことが可能だったのだろう。

自転車のパンク・窃盗から万引きまでがズルズルとバレて停学になったのが10人近いことを聞いて、その割に被害が少なかったのでは、と思ったが、なんとノリくんがそのたびに隠滅に勤しんでいたらしい。

もともとは霜田先輩がタイヤに穴をあけるだの自転車を盗むだのするたびにタイヤを交換して盗まれた自転車を返しに行っていたが、仲間がやり始めたため一人で回せなくなり、事件が表面化したらしい。


関係者だからと言ってことの顛末を教えてくれた香住先生は、「俺が高校生の時もこんな意味分かんねー奴いたのかな」と笑っていた。


「そーだ、芹沢に深夜徘徊はすんなって言っておいて」

「深夜徘徊、ですか」

「そー、ガキだから年上とか夜の街に憧れる気持ちも分かるけどな」

「年上、ですか」


体育祭が終わったから、次は中間テストだ、なんて冷房がまだ入らない職員室の中で考える。やることはきっと多いほうがいい。先生は一体何を見たんですか、と聞くのはなんとなくやめた。聞かなくても頭の中で簡単につなげられると思ったからだ。

少し前までは学校の中で不埒な青春を謳歌していた陽一の下半身のベクトルが、年上の女に向いた、だけだ。やっぱりあいつは何も変わらない。私みたいな短足女、構う理由がないじゃないか。






[3]中間テスト―新キャラ―ノリくん―嫉妬