ノリくん使用人だったんだ!?金髪ピアスで!?考えると足の指先から震え始めた。私にあんないかつく怒鳴ってきたのは外面だったってこと!?



「そうだ、芹沢のせいにすればいいじゃん。僕の鞄も盗まれてたことにすれば」

「しかし鞄はいつも通りの場所にありましたし……何よりあの時間帯にグランドで坊ちゃんを見たという生徒が居ないので」

「くそっ……あの馬鹿女さえヘマしなければ……!」


ほう、ヘマをした馬鹿女がいたのか。ていうか聞いてるといよいよ霜田先輩は救いようのないクズに思えてくる。ここまで来てまだ陽一を巻き込むつもりか。


「勘違いだけ一人前にしやがって」


あっ馬鹿女って私のこと!?



「おい、ゴミ坊や、お前の死ぬほど勝手な反抗期の延長で、女の子のこと倉庫に閉じ込めていいと思ってんの?」



気づくと陽一が2人のところへ割り込んで、そう言い放っていた。うわっ陽一、ツッコミづらい現場に飛び込んでいったなあ。私は絶対出ていかないけど。


「あ?あんな短足が女の子?」

「短足は関係ないでしょ!!」


出ていかないと決意した次の瞬間に私は反射でそれを覆して叫んでいた。


「生物学では足が短いと女じゃないって判断されるのか!?」

「あーうるせー!」


ふとノリくんを見ると気まずそうに言葉を詰まらせていた。当然だ、さっきからめちゃくちゃ敬語で坊ちゃん、と呼んでいる場面を私たちに見られたのだから。というか、同い年で坊ちゃん呼びはおかしいだろ何プレイだよ。

すると私の前に立った陽一がまあまあな勢いで霜田先輩の顎を掴んだ。ガッ、とかそういう音がして、霜田先輩はうっと声を上げる。



「俺は遊びで言ってんじゃねえんだよ。飛鳥がケガでもしてみろ、お前の一番重要なところ切断するからな」



なんてヤクザのようなセリフなんだ、と思いながら私は陽一を止める気にはならない。散々な目に遭ったけれど霜田先輩への怒りも落胆もあまりなく、それ以上に陽一に申し訳ない気持ちばかりが私の中にある。


「ていうか使用人は何してるのよ!馬鹿坊ちゃんを更生させろよ!」

「はっ……私は、できる限りのことは尽くしたのですが……」

「さっきの平謝りは何だよ!」


どう考えても霜田先輩に逆らえない家臣だったわ!