ももちゃんはそう言って笑うと私の腕を引いて先生にすみませんでした、と謝った。どこに謝る要因があるのか全く分からなかったけれど、先生は笑顔でまた明日、と言った。ももちゃんは少し優しそうな顔をしたし、先生はかっこいいし、もうなんでもいいかと思って私もうれしくなった。


それから数日間、ももちゃんは少しだけ機嫌がよかった。
放課後、ももちゃんのバイトまでの時間を教室でお菓子を食べながら適当につぶした。いつも通り話していただけだけど、ももちゃんは私の話に付き合ういっぽうでポッキーを1,2本つまんでいるだけだった。


「陽一がそんなにもうざいのかな」

「すべての人の異変がすべて俺のせいだと思うのやめない?単細胞なの?ミトコンドリアって呼ぶよ」

「うるっせぇモンキーセラーが」

「なんで売る人になってるんだよ……」


ていうか何でこの悪魔はしれっと私の横に座ってるんだよ。放課後ってモンキーの発情にはもってこいの時間なんじゃないのか。活動しなくていいのかよ。という意味を込めて陽一を睨むとちょっと太った?と言われてさらに殺意が沸いた。近日中にやるしかない。



「そろそろバイト向かわないと」

「じゃあ帰る前ともに充電して行こう!」


はあ?と目を細めるももちゃんの手を握って職員室前に走った。ばれないように窓からこっそりと中を除くと、香住先生の周りにはスカートが短い女子数人が群がっていた。


「排除だあああああ」

「ちょっと落ち着け!あの子たち教科書持ってるでしょ!飛鳥よりは純粋な動機だ!」

「教科書!?姑息な!」

「いや思いつけよ」


目が血走っていることを自覚している。なんだ、あいつら!あの足で香住先生を誑かそうとしている!しかも結構いい脚だ!世界の終わりだ!しかも数?の教科書持ってる!?格が違う!

しかも先生はにこやかに対応している。ドア越しでも十分に殺傷能力のある素晴らしい笑顔だった。あぁなんて罪深い男の人なの……!


「ラスボスどもめ……」


ふと気が付くと、ももちゃんが私のつぶやきに気が付かず、ぼうっと職員室の中を見ていることに気が付いた。その目線はどこか悲しげで、口を横に結んだまま、目が離せない、というような様子だった。センターで分けた黒髪セミロングと切れ長の奥二重の目が、とてもきれいに見える。


「ももちゃん、」

「え?あ、なに」