「さすがに昼間の学校でやるのはまずいでしょ!」
「待って」
陽一を見ると眩しそうに目を細めている。明順応している途中らしい。時計を見ると1時15分。そろそろ昼休憩が終わって、グラウンドで点呼が行われる時間帯だ。
「飛鳥、霜田先輩のクラスどこ?」
「3年5組10番。窓側前から3番目、鞄に尻尾のキーホルダーがついてる」
こわ、そして古、と笑う陽一のあとについて行って、三年生の教室に入る。先輩のスクールバックをひっくり返すと、予想通り複数の財布が出てきた。思わずどうして、と呟くと陽一がやっぱりな、とため息をつく。
「自転車に穴開けてるの見たことあるから。倫理観ないだろうなとは思ってた」
「何で言ってくれないの!?」
「言ったって信じないだろ、馬鹿」
「そんなことっ」
そういえば霜田先輩を庇って陽一に殴られたな、と思うとそれ以上言い返せない。陽一が呆れたように私を見るので自分のことが恥ずかしくなってくる。陽一の言うことを信じず盲目で、しまいには陽一を巻き込んで閉じ込められてるような自分が。
自転車に穴をあけるって、今流行ってるやつか。そんなことして何になるんだろう、自転車のタイヤなんて汚いじゃないか、あんな何を踏んでるか分からないようなもの、よく触れるな。匂いが付きそうだし、絶対に黒い跡がつくじゃないか。あれ、でも霜田先輩の手はいつもきれいだった。
そこまで考えてある違和感を感じる。陽一を見ると当然だけれど私の考えていることを察していない陽一は財布を見てうーん、と唸る。
「でも霜田先輩が財布を盗む動機がなー」
「面白いから。それ以上考えてない」
背後でそう返事をしたのは、私がたった今思い出していた人物だった。
「ノリくん」
「思いつく悪いことをして遊んでるんだ。別に恨みがあるわけでもないし、金がないわけでもない。何なら家は金持ちで、多少の粗相を揉んでくれる程度には教員とつながってる」
「公立の高校でそんなことできるわけねーだろ」
「さすがに財布盗むは消せねぇな。だから一個下の気に食わないやつになすりつけることにしたんだろ」
「かけらも面白くねえ。頭いってんな」
「待って」
陽一を見ると眩しそうに目を細めている。明順応している途中らしい。時計を見ると1時15分。そろそろ昼休憩が終わって、グラウンドで点呼が行われる時間帯だ。
「飛鳥、霜田先輩のクラスどこ?」
「3年5組10番。窓側前から3番目、鞄に尻尾のキーホルダーがついてる」
こわ、そして古、と笑う陽一のあとについて行って、三年生の教室に入る。先輩のスクールバックをひっくり返すと、予想通り複数の財布が出てきた。思わずどうして、と呟くと陽一がやっぱりな、とため息をつく。
「自転車に穴開けてるの見たことあるから。倫理観ないだろうなとは思ってた」
「何で言ってくれないの!?」
「言ったって信じないだろ、馬鹿」
「そんなことっ」
そういえば霜田先輩を庇って陽一に殴られたな、と思うとそれ以上言い返せない。陽一が呆れたように私を見るので自分のことが恥ずかしくなってくる。陽一の言うことを信じず盲目で、しまいには陽一を巻き込んで閉じ込められてるような自分が。
自転車に穴をあけるって、今流行ってるやつか。そんなことして何になるんだろう、自転車のタイヤなんて汚いじゃないか、あんな何を踏んでるか分からないようなもの、よく触れるな。匂いが付きそうだし、絶対に黒い跡がつくじゃないか。あれ、でも霜田先輩の手はいつもきれいだった。
そこまで考えてある違和感を感じる。陽一を見ると当然だけれど私の考えていることを察していない陽一は財布を見てうーん、と唸る。
「でも霜田先輩が財布を盗む動機がなー」
「面白いから。それ以上考えてない」
背後でそう返事をしたのは、私がたった今思い出していた人物だった。
「ノリくん」
「思いつく悪いことをして遊んでるんだ。別に恨みがあるわけでもないし、金がないわけでもない。何なら家は金持ちで、多少の粗相を揉んでくれる程度には教員とつながってる」
「公立の高校でそんなことできるわけねーだろ」
「さすがに財布盗むは消せねぇな。だから一個下の気に食わないやつになすりつけることにしたんだろ」
「かけらも面白くねえ。頭いってんな」