「どういう意味ですか」
今日、そんなに喋ってないけれど陽一の姿は見たし、いつも通りだったけどなあ、と思い返していると、霜田先輩はでも、と微笑のまま続ける。
「昨日から割と陽一、周りからスカン気味だからさー。財布の件で」
「へえ。まあ普段の行いが悪いから疑われたんでしょうね」
「疑う、か。飛鳥ちゃんは陽一のこと信じてるんだね」
「信じてるとかじゃなくて、陽一はやってないです」
幾らなんでも腐っても陽一は幼馴染なのだから、倫理観のあるなしくらいは分かる。いや、倫理観というのは違うかもしれない。陽一は去年、彼氏持ちに手を出して捨てて、フォークで頬っぺたを引っかかれていたんだった。あれっ、じゃあ陽一が信用に値するかどうかなんて私には言い切れ,ない……?
そんなことを思い出しているあいだにも、霜田先輩にいる男の人たちは何やら楽しそうに談笑していて、ちらちらと私のほうを見ているのが、あまり気分のよいものではない。霜田先輩が綺麗だから威力はほぼないので問題ないけれど。
どのタイミングでお弁当を渡そうかな、と思っていると「そうだ」とひらめいたように呟いた霜田先輩が立ち上がって私のもとへ向かって来た。
「飛鳥ちゃん、ちょっとついてきてくれない?」
霜田先輩が私を連れて行ったのは、校舎裏の体育倉庫だった。体育館の横につくように建っていて、日差しが厳しい時には影ができる。そのせいか夏場には、よくここでたむろしている人たちを見たことがある。
今日は誰も来てないな、当然か、と思ったところで霜田先輩は倉庫にかかった南京錠を手で外した。
「……手で!?」
「あ、違うから。ここ古くなってて、もうこの鍵飾りなんだよ」
霜田先輩の怪力説は誤解だったにしろ、いや、そんなことってあるのだろうか、と半ば関心する。セキュリティが低すぎるだろう、器具だって盗まれるでしょうよ。そんなこと思っていると、電気のついていない埃っぽくて薄暗い倉庫の中に霜田先輩は入っていく。
「ちょっとこっち来て?」
優しい笑顔につられて私も倉庫に入るけれど、なんで、と思って足を止める。
「あの、は、恥ずかしがらないでください」
「え?」
「赤い顔が見られるのが嫌なら見ませんからっ……あ、明るいところではっきり好きって言ってください!」
今日、そんなに喋ってないけれど陽一の姿は見たし、いつも通りだったけどなあ、と思い返していると、霜田先輩はでも、と微笑のまま続ける。
「昨日から割と陽一、周りからスカン気味だからさー。財布の件で」
「へえ。まあ普段の行いが悪いから疑われたんでしょうね」
「疑う、か。飛鳥ちゃんは陽一のこと信じてるんだね」
「信じてるとかじゃなくて、陽一はやってないです」
幾らなんでも腐っても陽一は幼馴染なのだから、倫理観のあるなしくらいは分かる。いや、倫理観というのは違うかもしれない。陽一は去年、彼氏持ちに手を出して捨てて、フォークで頬っぺたを引っかかれていたんだった。あれっ、じゃあ陽一が信用に値するかどうかなんて私には言い切れ,ない……?
そんなことを思い出しているあいだにも、霜田先輩にいる男の人たちは何やら楽しそうに談笑していて、ちらちらと私のほうを見ているのが、あまり気分のよいものではない。霜田先輩が綺麗だから威力はほぼないので問題ないけれど。
どのタイミングでお弁当を渡そうかな、と思っていると「そうだ」とひらめいたように呟いた霜田先輩が立ち上がって私のもとへ向かって来た。
「飛鳥ちゃん、ちょっとついてきてくれない?」
霜田先輩が私を連れて行ったのは、校舎裏の体育倉庫だった。体育館の横につくように建っていて、日差しが厳しい時には影ができる。そのせいか夏場には、よくここでたむろしている人たちを見たことがある。
今日は誰も来てないな、当然か、と思ったところで霜田先輩は倉庫にかかった南京錠を手で外した。
「……手で!?」
「あ、違うから。ここ古くなってて、もうこの鍵飾りなんだよ」
霜田先輩の怪力説は誤解だったにしろ、いや、そんなことってあるのだろうか、と半ば関心する。セキュリティが低すぎるだろう、器具だって盗まれるでしょうよ。そんなこと思っていると、電気のついていない埃っぽくて薄暗い倉庫の中に霜田先輩は入っていく。
「ちょっとこっち来て?」
優しい笑顔につられて私も倉庫に入るけれど、なんで、と思って足を止める。
「あの、は、恥ずかしがらないでください」
「え?」
「赤い顔が見られるのが嫌なら見ませんからっ……あ、明るいところではっきり好きって言ってください!」