美しいけれどあまりに美しすぎて声が裏返ったうえに語尾が日本語になりきらなかった。ももちゃんが「寿司!?」と驚愕している、ももちゃんはこんなにも私のミスをすべて拾って、疲れないのだろうか。

それを聞いた先輩がはは、と笑う。それを見てなんだか、ふわふわした人だなあ、という印象をもつ。



「飛鳥ちゃん、可愛いね」




たとえ突然に太陽が落ちてきたとしても、今の私なら押し返すことができる気がする。いや、これは確信である。「太陽は地球より大きいけどね」とももちゃんが疲れ気味に呟いた。


「これってもう付き合ってってことかな?」

「言い慣れてただろ、あれは」


ももちゃんがあしらうように笑う。まあ確かにあんなにかっこよかったらな、と私は納得する。これからしばらくは先輩の動向を観察して、近寄る女をリストアップするところから始めよう。


次の日は朝から席替えが行われた。私のクラスでは月に一度、くじ引きで席が変わっている。月に一度というのは案外すぐなもので、隣の人が男の子だったり静かな子だったりすると、あんまり仲良くなる前に変わらなくちゃいけないこともしばしばある。



黒板に書いてある番号を見ながら席を移動させると、しばらく待っても私の隣に誰も来なかった。黒板には私の番号の横にも番号が書いてあるのになあ、と思っていると、「あれ、19って誰も引いてないの?あ、芹沢か」と担任の先生が言った。私の一か月はこれで終了することが決定した。



「モンキーがうつるうううぅぅぅぅ」

「ちょっとそこ静かにしなさい。えっとー、最近自転車の盗難とパンクが流行ってるみたいだから気を付けて生活するようにー」


盗難とパンクが流行るって何、と笑っていると、私の笑いとは別の笑みを顔に浮かべたももちゃんが休み時間になると私のもとへやってきた。


「陽一の隣だねえ、面白そう」

「えっ何も面白くないんだけど。自転車の盗難・パンク・陽一はどれも面白くない」

「何でそこ並ぶの?」


陽一の机を、クラスメイトが私の隣の席に運んできたのと入れ違いで陽一は教室へ入ってきた。陽一は席替えがあったことを知らないらしく、もともとの席へ言ってしばらく無言で立ち尽くしたのち、クラスメイトに指摘されて私の隣へやってきた。


「あれ、今度の隣は飛鳥なんだ。俺のこと好きなの?」

「ゴミ箱に捨てるよ?」