それは馬鹿な私でも分かる痛みだからだ。けれど共感できない。母親に母親と呼ばせてもらえないことが途方もない苦しみであることは分かっても、それがどの程度なのか、分からない。
「全部あの人の言った通りだった。飛鳥、俺から離れたいって泣いただろ」
陽一が泣いているように見えるのは、私だけなのだろうか。そしてあの日の私の勢いが、しっかりと陽一を傷つけていたことを改めて思い知った。私の中の小さな部屋に、隙間を見つけてまた、後悔が押し込まれる。
「飛鳥だけだったよ、泣いて取り乱すところを見て、どうにかしたいと思ったのは。飛鳥が苦しむなら全部の要因を取り除いてやりたいと思ってた。そんな人、飛鳥だけだったよ」
告白みたいだ、と思ってから、だから陽一は私から離れたのか、と気づいて、息ができなくなる。
私が離れたいと泣いたから。それだけが原因だったのかと思うと言葉が出てこない。陽一は私に愛想を尽かしたのではなく、私のために、自分が私を苦しめる要因だと疑わずに。
それが寂しくて苦しい陽一の愛情表現なのか、と考えるだけで泣けてくる。
同情か共感かが、胸の奥でちりちりと鳴っている。罪悪感と後悔が押し寄せてくる。陽一がこんなことを考えているなんて知らずに、いつものへらへらした顔がすべてだと思い込んで、陽一の言葉などまるで信用せず、いつも。
とっさに陽一の腕を掴んだ。その腕から苦しくてたまらない気持ちが、流れ込んでくるようだった。
「ちが、陽一、違うんだよ」
撤回しなければ。本当はもう二度と陽一と離れたくないんだと、今すぐ言わなければ。自分の間違いをひとつひとつ自覚するだけで、涙が流れて仕方ない。陽一が私の涙を見てまた顔をしかめる。それすら申し訳ない。
陽一が私の腕を解こうと後ろに身を引いた。私はそれにしがみついて聞いて、と声を張る。
これから私は自分の恥やプライドをすべて棄てて、人生で初めて本当の告白をするんだ。
「ずっと、自分のことしか考えてなかったの。陽一でない誰かを好きになれれば、もう傷つかなくて済むと思ってた。私の中に常にあった大きい存在が、私を傷つけないように」
「全部あの人の言った通りだった。飛鳥、俺から離れたいって泣いただろ」
陽一が泣いているように見えるのは、私だけなのだろうか。そしてあの日の私の勢いが、しっかりと陽一を傷つけていたことを改めて思い知った。私の中の小さな部屋に、隙間を見つけてまた、後悔が押し込まれる。
「飛鳥だけだったよ、泣いて取り乱すところを見て、どうにかしたいと思ったのは。飛鳥が苦しむなら全部の要因を取り除いてやりたいと思ってた。そんな人、飛鳥だけだったよ」
告白みたいだ、と思ってから、だから陽一は私から離れたのか、と気づいて、息ができなくなる。
私が離れたいと泣いたから。それだけが原因だったのかと思うと言葉が出てこない。陽一は私に愛想を尽かしたのではなく、私のために、自分が私を苦しめる要因だと疑わずに。
それが寂しくて苦しい陽一の愛情表現なのか、と考えるだけで泣けてくる。
同情か共感かが、胸の奥でちりちりと鳴っている。罪悪感と後悔が押し寄せてくる。陽一がこんなことを考えているなんて知らずに、いつものへらへらした顔がすべてだと思い込んで、陽一の言葉などまるで信用せず、いつも。
とっさに陽一の腕を掴んだ。その腕から苦しくてたまらない気持ちが、流れ込んでくるようだった。
「ちが、陽一、違うんだよ」
撤回しなければ。本当はもう二度と陽一と離れたくないんだと、今すぐ言わなければ。自分の間違いをひとつひとつ自覚するだけで、涙が流れて仕方ない。陽一が私の涙を見てまた顔をしかめる。それすら申し訳ない。
陽一が私の腕を解こうと後ろに身を引いた。私はそれにしがみついて聞いて、と声を張る。
これから私は自分の恥やプライドをすべて棄てて、人生で初めて本当の告白をするんだ。
「ずっと、自分のことしか考えてなかったの。陽一でない誰かを好きになれれば、もう傷つかなくて済むと思ってた。私の中に常にあった大きい存在が、私を傷つけないように」

