ももちゃんは表情を固まらせた。そういうところも可愛くて、いとおしくて、優しい。


「私はももちゃんの一番の友達だから、絶対に大丈夫。結果がどんな風になっても受け入れるし、ももちゃんがいつも私にしてくれるみたいに慰めることだってする。だから言ってきなよ」


「あすか」


「ももちゃんのこと、私はすごく好き。ラブフォーエバー」


ももちゃんは困ったように笑って、ありがとう、と言った。ていうか私一度振られてるしな。一秒で。とは言わず私は笑い返しながら、ももちゃんの不機嫌に終わりがこればいいと思う。

はぁまた私に釣り合うイケメンを探さなければいけない。大丈夫だ、学校は広い。そう思って振り返ると、憎たらしい顔が珍しくニヤつかずに真顔で私を見ていた。一瞬どぎまぎした後、これはこれでいやだな、と思う。


「何見てんだよ」

「飛鳥はいつ俺のこと信用してくれんの」

「私に原因があるみたいに言わないでよ。信用に値しないのが悪いんでしょ」

「なんでだよ、悪いことしてないだろ」

「そんなこと言うならせめてもっとばれないようにやれば?その首元、目障りだよ」



なんだよそれ、と陽一はスマホを取り出すと自分の首元を確認する。そしていったい何万馬力の力で吸われたらつくのか分からないえぐい赤いマークに気が付いたらしく、うえげろ、と言った。こっちのセリフ以外の何物でもないだろ馬鹿、と言いたくなるのを抑える。

陽一は言い訳してこなかったから、やっぱり信用しなくてよかった、と改めて考える。


参考書の前でドキドキとか更年期かよ!と陽一につっこまれたことが突然思い返される。それなら、これこそ更年期だきっとそうだ。こんな後悔するような、悲しいような、ドキドキは、私の人生に必要がない。




「追いかけた先に婚約者がいた」



「ひえええぇぇぇそんなの私のデータにないよぉ……さすが美しい香住先生……」


次の日、いつも通りももちゃんに挨拶をするや否や、以上のように報告を受けた。

私のリアクションにももちゃんは苦笑う。あのあと先生のもとへ行くと、大人の女の人が香住先生の横から顔を出し、ももちゃんに挨拶をしたそうだ。そして先生がはっきりと、「この人と結婚するつもりなんだ」と説明したらしい。