「机に菊の花を挿した花瓶が飾られてたこともあるよ。教科書八つ裂きにされたこともある。一番キツかったのは、カンニングでっちあげられて、停学になりそうになったことだけど」
ももちゃんが私の横で全然知らなかったように驚いた顔をしている。ちなみに全部、二股騒動があってから起きたことだ。そう言ってやろうかと思ったけれどそんな必要はないと思えるほどセイラちゃんは傷ついた顔をした。それくらい見越してあんなことしたのかと思ったのに、笑える。
「いやー別に大したことじゃなかったからそんな泣きそうな顔しないでよ。一日くらいスリッパで帰れば大丈夫だよ。ほら、そんなくだらねー嫌がらせ気にすんなっ」
セイラちゃんの腕を引くと、白くて細い腕が少しだけ震えていた。
「あのさ、セイラちゃん。今だったら実感とともに理解できると思うから言うけど、安易な嫌がらせがさ、人の人生壊したりするんだから気をつけなよ。飛鳥だったからいいものの」
校門を通り抜けるタイミングで、ももちゃんがそう諭すように言った。するとセイラちゃんは俯いて目を伏せる。なんだか、セイラちゃんがすごく責められてるみたいで私は少したじろぐ。
「え、あの別にそんな気にして」
「鈍感、なんですね」
は?とももちゃんが眉根を寄せる。セイラちゃんが今度は顔を上げて私の目を見て言った。驚いたことは、セイラちゃんの大きな目から涙が零れていたことだ。
「鈍感ですよ。鈍感っていいですね。いつまでも天真爛漫で、無邪気で、素直でいられて」
「どういうこと?」
「私みたいなやつのこと、憎まないで庇えるなんて見上げた根性ですね。私本当に先輩のそういうところ、」
いつもの低くて不愉快そうな声に私は続きの言葉を察する。それで眉毛を下げたことでセイラちゃんは、私が察したことを知ったらしい。それ以上は言って来なかった。
嫌われることをした覚えはなくても、私の性格を心の底から理解できない人は一定数いて、その人は絶対に私のことを嫌うんだろう。私が明るく振る舞おうがどうしようが。
「陽一先輩のことだってそうですよ。そんなにも鈍感なのはいっそ罪だと思います。あなただけですよ、分からないの」
「セイラちゃん」
続きの言葉を待っていたけれど、セイラちゃんの言葉はももちゃんによって遮られる。
ももちゃんが私の横で全然知らなかったように驚いた顔をしている。ちなみに全部、二股騒動があってから起きたことだ。そう言ってやろうかと思ったけれどそんな必要はないと思えるほどセイラちゃんは傷ついた顔をした。それくらい見越してあんなことしたのかと思ったのに、笑える。
「いやー別に大したことじゃなかったからそんな泣きそうな顔しないでよ。一日くらいスリッパで帰れば大丈夫だよ。ほら、そんなくだらねー嫌がらせ気にすんなっ」
セイラちゃんの腕を引くと、白くて細い腕が少しだけ震えていた。
「あのさ、セイラちゃん。今だったら実感とともに理解できると思うから言うけど、安易な嫌がらせがさ、人の人生壊したりするんだから気をつけなよ。飛鳥だったからいいものの」
校門を通り抜けるタイミングで、ももちゃんがそう諭すように言った。するとセイラちゃんは俯いて目を伏せる。なんだか、セイラちゃんがすごく責められてるみたいで私は少したじろぐ。
「え、あの別にそんな気にして」
「鈍感、なんですね」
は?とももちゃんが眉根を寄せる。セイラちゃんが今度は顔を上げて私の目を見て言った。驚いたことは、セイラちゃんの大きな目から涙が零れていたことだ。
「鈍感ですよ。鈍感っていいですね。いつまでも天真爛漫で、無邪気で、素直でいられて」
「どういうこと?」
「私みたいなやつのこと、憎まないで庇えるなんて見上げた根性ですね。私本当に先輩のそういうところ、」
いつもの低くて不愉快そうな声に私は続きの言葉を察する。それで眉毛を下げたことでセイラちゃんは、私が察したことを知ったらしい。それ以上は言って来なかった。
嫌われることをした覚えはなくても、私の性格を心の底から理解できない人は一定数いて、その人は絶対に私のことを嫌うんだろう。私が明るく振る舞おうがどうしようが。
「陽一先輩のことだってそうですよ。そんなにも鈍感なのはいっそ罪だと思います。あなただけですよ、分からないの」
「セイラちゃん」
続きの言葉を待っていたけれど、セイラちゃんの言葉はももちゃんによって遮られる。

