ざわざわこそこそしているのは男女両方で、なるほど全員が全員その対象を嫌いなわけではなく、ただ対象がとても目立ち、目を引く容姿だからみんな興味があるんだな、ということに気づく。
セイラちゃんはしばらく立ち尽くして、彼女のものと思われる下駄箱を見つめたあと、小さく息をついて手を入れた。そして四角い箱いっぱいに詰め込まれた汚い雑巾を一気に出して地面に捨てる。
それを私も立ち止まって見ていて、少し前の自分を思い出す。人と文明がどれだけ成長しても、物理的ないじめイコール下駄箱という発想は永遠に女子高生の頭から消えないのか。
だけどセイラちゃんは自分の靴を取り出して履くことはしない。まだ動かない彼女を不可解に思ってから、そうか汚いもんな、と納得する。私の場合は盗られたからそれ以前の問題だけど。しばらく見ていると彼女はこっちをちらりと見て、彼女の大きい瞳とばっちり目が合った。
「なに、見てるんですか」
その声が震えていることと、セイラちゃんの目が潤んでいることに気づくと、驚きとともに何とも言えない気持ちになる。
セイラちゃんが私をしっかり睨んでそう言うから、必然的に注目を浴びる。
「そんなことになってたのかー、と思ってさ」
「他人事ですね。あなたのせいなのに」
いや、なんでだよ、と笑うけれどどうやらセイラちゃんは冗談を言っているつもりではないらしい。
「あなたがファミレスで半端に私のこと庇うから、あの子たちが悪意をもう隠さなくなったんですよ。
そうでなかったらずっと知らない振りできたのに」
うーんどうなんだ、と思って考えるけれど正しい答えは分からない。だけど私にとってみれば、あんなすでに終わっていた友情にしがみつくことは、とても幸せだとは思えない。
「そんなことする発想がわく女なんて、友達じゃないでしょう」
「分かったような口叩かないで」
「そりゃ経験者ですから。私もあの二股騒動のおかげで靴盗まれて、代わりにちょうしのんなブス?っていうメモ頂いたわ」
するとセイラちゃんは目を見開いて返事に困った顔をした。ああ知らなかったのか、まあ全部が全部セイラちゃんがやったことではないのは明白だし、知らないのも無理はないだろう。
セイラちゃんはしばらく立ち尽くして、彼女のものと思われる下駄箱を見つめたあと、小さく息をついて手を入れた。そして四角い箱いっぱいに詰め込まれた汚い雑巾を一気に出して地面に捨てる。
それを私も立ち止まって見ていて、少し前の自分を思い出す。人と文明がどれだけ成長しても、物理的ないじめイコール下駄箱という発想は永遠に女子高生の頭から消えないのか。
だけどセイラちゃんは自分の靴を取り出して履くことはしない。まだ動かない彼女を不可解に思ってから、そうか汚いもんな、と納得する。私の場合は盗られたからそれ以前の問題だけど。しばらく見ていると彼女はこっちをちらりと見て、彼女の大きい瞳とばっちり目が合った。
「なに、見てるんですか」
その声が震えていることと、セイラちゃんの目が潤んでいることに気づくと、驚きとともに何とも言えない気持ちになる。
セイラちゃんが私をしっかり睨んでそう言うから、必然的に注目を浴びる。
「そんなことになってたのかー、と思ってさ」
「他人事ですね。あなたのせいなのに」
いや、なんでだよ、と笑うけれどどうやらセイラちゃんは冗談を言っているつもりではないらしい。
「あなたがファミレスで半端に私のこと庇うから、あの子たちが悪意をもう隠さなくなったんですよ。
そうでなかったらずっと知らない振りできたのに」
うーんどうなんだ、と思って考えるけれど正しい答えは分からない。だけど私にとってみれば、あんなすでに終わっていた友情にしがみつくことは、とても幸せだとは思えない。
「そんなことする発想がわく女なんて、友達じゃないでしょう」
「分かったような口叩かないで」
「そりゃ経験者ですから。私もあの二股騒動のおかげで靴盗まれて、代わりにちょうしのんなブス?っていうメモ頂いたわ」
するとセイラちゃんは目を見開いて返事に困った顔をした。ああ知らなかったのか、まあ全部が全部セイラちゃんがやったことではないのは明白だし、知らないのも無理はないだろう。

