教室に戻ると、放課後に呼び出された私を待っていてくれたももちゃんが「今度は何したの」と半笑いで尋ねてきた。何って、と思ってからそういえば無駄に生徒指導室に呼び出されたのだと腹が立ってくる。
私は自分の鞄をまとめてももちゃんと昇降口に向かいながら、担任の先生と話したことを報告する。
「陽一が留年だって、どうしよう」
「は!?出席日数?」
「そう、だから何とかしてって言われたけど、なんで私に」
「今すぐ行きなよ」
どこに、と疑問形になりきらない抑揚で尋ねるとももちゃんが芹沢の家、と反射のように答える。私はそれに苦笑いをした。幾ら何でも、という気持ちを隠し切れない。
「無理だよ。1ヶ月連絡取ってないんだよ。陽一がなんで来てないかも知らないし、話してもないし、最後に喋った時は拒絶されたんだよ」
ももちゃんは目を細めて私の話を最後まで聞いた。きっとグズグズする私にいら立っているんだろうと思いながら、だけど言葉を切られなかった私は気が済むまで言い訳を続ける。
「私が行っても余計に登校拒否するだけだよ。出てすらもらえない」
言いながら、自分で自分のことがどんどん嫌になっていく。そしてももちゃんが次に何と言うかをなんとなく察する。だけどももちゃんは私に怒ることはなく、小さく息をついた。
「それで飛鳥は前に進めたの?」
反語のような疑問だ、と思った。私は陽一に合わなかった1ヵ月間のことを思って、騙せない、と首を振る。
ももちゃんがそうだよね、と続ける。
「誰だって拒絶されるのは怖いし傷つきたくない。だけど忘れられないなら、一生そこにいる羽目になるんだよ」
抽象的な言い方をされても一発で実感とともに伝わってくるくらい、ももちゃんの言っていることは図星だ。そしてその理由は、私が傷つくことを恐れてまだ伝えていないことがあったからだ。
玄関でももちゃんと靴を履き替えていると、何やら隣の下駄箱が盛り上がっていることに気づく。隣ってことは1年生の下駄箱か、何かパーティでもしてるんだろうか。せめて教室でやれよ。
そう思いながら通りがけに覗くと、ざわざわこそこそしている集団の対象は一人で、自分の下駄箱の前に立ち尽くしていた。
私は自分の鞄をまとめてももちゃんと昇降口に向かいながら、担任の先生と話したことを報告する。
「陽一が留年だって、どうしよう」
「は!?出席日数?」
「そう、だから何とかしてって言われたけど、なんで私に」
「今すぐ行きなよ」
どこに、と疑問形になりきらない抑揚で尋ねるとももちゃんが芹沢の家、と反射のように答える。私はそれに苦笑いをした。幾ら何でも、という気持ちを隠し切れない。
「無理だよ。1ヶ月連絡取ってないんだよ。陽一がなんで来てないかも知らないし、話してもないし、最後に喋った時は拒絶されたんだよ」
ももちゃんは目を細めて私の話を最後まで聞いた。きっとグズグズする私にいら立っているんだろうと思いながら、だけど言葉を切られなかった私は気が済むまで言い訳を続ける。
「私が行っても余計に登校拒否するだけだよ。出てすらもらえない」
言いながら、自分で自分のことがどんどん嫌になっていく。そしてももちゃんが次に何と言うかをなんとなく察する。だけどももちゃんは私に怒ることはなく、小さく息をついた。
「それで飛鳥は前に進めたの?」
反語のような疑問だ、と思った。私は陽一に合わなかった1ヵ月間のことを思って、騙せない、と首を振る。
ももちゃんがそうだよね、と続ける。
「誰だって拒絶されるのは怖いし傷つきたくない。だけど忘れられないなら、一生そこにいる羽目になるんだよ」
抽象的な言い方をされても一発で実感とともに伝わってくるくらい、ももちゃんの言っていることは図星だ。そしてその理由は、私が傷つくことを恐れてまだ伝えていないことがあったからだ。
玄関でももちゃんと靴を履き替えていると、何やら隣の下駄箱が盛り上がっていることに気づく。隣ってことは1年生の下駄箱か、何かパーティでもしてるんだろうか。せめて教室でやれよ。
そう思いながら通りがけに覗くと、ざわざわこそこそしている集団の対象は一人で、自分の下駄箱の前に立ち尽くしていた。

