きみを守る歌【完結】

「……なんでいちいち生徒指導室に呼び出すんですか!!」

「いや、たまたまだよ、たまたま」


担任の先生は私の勢いに圧されたように弁解した。何がどうたまたま無実の生徒を生徒指導室に呼び出す状況を作るんだよ!私は何もしてないぞ!

また何か濡れ衣だろうか、と思って反論の言葉を考えながら顔を上げると担任の先生は、いつもよりもずっと困った顔をしていた。



「芹沢のことなんだが」



出た出た。この学校の人はいちいち私と陽一を関連付けたがるんだな。いよいよそれが笑えない状況になってるっていうのに。



「留年?」


「いよいよあいつ、欠席日数がやばいだろ。このままだと全教科留年要件だ。もうスレスレだ」


「は……!?」


それはいくら何でも驚いた。確かにもちろん休みすぎだけれど、それくらいちゃんと考えてやっていると思っていた。いくら陽一でも、賢いんだから。



「あんな試験の成績が良いのに留年なんて、馬鹿げてるだろ」

「電話したんですか」

「もちろんしたよ。学年一位が留年ってウケますねと言われた」

「どいつもこいつもウケる場所が違うんだよ!」


お母さんに失恋をネタにウケられた日のことを思い出して思わずそう口走っていた。それにしても、留年しそうだということが分かってるのに陽一は学校に来ていない?


「何か知ってるか、芹沢の悩みとか」

「いや、全然知らないです。むしろもう久しく口聞いてないです」

「それじゃないのか、原因」

「なんでだよ」


先生には敬語を使いなさい、と疲れた声で指摘される。そんなにも疲れるくらい悩んでるならもっと本気で来させたらいいじゃないか、家まで押しかけたらいいじゃないか。

そう主張すると、何度もしようとした、と返ってくる。そりゃそうか。


「電話には出るが、家に行っても出ないんだ」

「親に訴えたんですか」

「あそこは父子家庭だろう。父親はほとんど仕事に出ていて、息子のことにあまり関心がない」


いや、だからって。そんなことになっているとは全然知らなかった。


「お願い有栖川、なんとかして」

「無理ですよ……!ちなみにあと何日で留年なんですか」

「テスト次第で全力でかけあうつもりだが、現国は2時間」

「馬鹿でしょあいつ!!」