きみを守る歌【完結】

「ももちゃん、おはよ?」

「あっ飛鳥か!誰かと思った!」


そんなにも違うの!?確かに顔全体むくみまくりだし、目の周りなんか特にひどくて二重の線も完全にどこかへ逃走してしまっているけれど。はやく帰ってきてほしいけれど。

ももちゃんはひどい顔だと言わんばかりに私の顔をまじまじと見てから、それから「お疲れ様」と言った。私はうん、と言ってから続きの言葉が見つからない。


「どうだったの?全部、言えたの?」

「……全然」

「何やってんのよー」


ももちゃんはそう呆れたようにため息をつきながら、だけどどこか共感的だった。それに私はまた疑問を覚えて、不可解な顔をしていたのがばれたのかももちゃんが何、と言う。


「ももちゃんって、私の気持ち全部知ってたのかなぁと思って。スーパーマンみたい」

「そんな激安のメタファーで人のこと表現しないでよ。全部は分からないけどわかる部分も多いよ。っていうか飛鳥のそういうグズグズしたところ、おおよそ誰もが通る道だよ」



前半何を言われたのかよく分からなかったけれど、私はももちゃんにはっきりとグズグズ、と言われたことに衝撃を受ける。グズグズって、漢字にすると、愚図愚図じゃん。字面、最低最悪じゃん。


「だから気持ちは分かるけど、はやく脱出できるといいね。臆病でも、全然いいことないよ」

「臆病かな」

「そりゃもう。まあ芹沢も大概だな」

「陽一は臆病じゃないでしょ」


ももちゃんは窓の外を見ながらはは、と笑った。私は一連のももちゃんの発言を思い出して、この人本当は何歳なんだろう、なんて考える。


「私には臆病でいろいろ間違えた子どもに見えるけどね」


その発言に、なぜか私が傷ついた。だけど次の瞬間に、臆病!子ども!ざまあみろ!という気持ちがわいてきて、ぜひ陽一に聞かせてやりたい、と思う。

ももちゃんは汚い言葉遣いをしていないのになぜか、人を効果的に傷つけるタイプだと思った。ノリくんみたいな直球で暴言を吐いてくるのとは違って、賢いやり方だ。


「まあ、まだ手遅れにはならないでしょ。ぼちぼち頑張れ」


ももちゃんは教室にかかっている時計の横の時間割表を見て、うわー次生物、と言ってうなだれた。