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「うわああああ先生がかっこよすぎて何も頭に入ってこない。陽一の顔も目に入らない」

「飛鳥をシバくことに異論のある人はいますか?いないなら今すぐいきます」

「ももちゃんにしか聞こえない声で言ってるよねそれわざとだよね?あっ本当に叩いた!最悪!バルス!」


放課後の教室で、軽く錯乱状態に陥る私に陽一が鋭い平手打ちを落とした。乙女が夢の途中だというのに信じられない極悪非道なこの男は、いらついたように目を細めて笑っている。私の前の席に座るももちゃんはわれ関せずという顔をして外を見ている。


「嫁入り前の顔になんてことすんの!?この、ガングログローラが!」

「そんなに黒くねえだろ!?ていうかグローラって怪物みたいなあだ名やめろ!」

「タイヤのホイールの名前だよ無知な人間は滅びろ!」


陽一の茶髪が腹立たしい。たくさんあいたピアスも腹立たしい。しかし一番どうでもいいけれど目障りでいらいらするのが、首にくっきりとついたキスマークの跡。こんな下半身が人間になりきれなかったモンキーが、少し前には私を本気で口説こうとしたと思うと虫唾が走る。

しかしそんなことはどうでもいい。2年生になって新しく赴任してきた先生の中に28歳の若くて整った顔をして物腰が柔らかくて授業が分かりやすいという完璧な人がいる。私の目にはもうその人しか入らない。


ももちゃんに同意を求めると、史上最強に白けた表情を向けられた。


「いい加減夫婦漫才に付き合わせるのやめろ」

「ももちゃん!?夫婦っていうのは適法の婚姻をした男性と女性のこと(ウィキペディアより引用)だよ!?こんな暴力モンキーが私の夫だなんて人生詰んでるよ!?」

「いいんだよ飛鳥をシバいていいのは俺だけだから、他の奴にされたら殺してやるよ」


殺られる前に殺らなければ。武者震いをして陽一を睨むとまたもへらっと笑ってくる。切れ長の二重の目と、目が合ったのちにそらすのはいつも私のほうである。私は陽一と3秒以上目を合わせられない病気なのだ。なぜならモンキーがうつるから。


「とにかくですね、一秒でも早く先生にアプローチかけないと、きっと他の女が群がるでしょ?もう夏だし。そろそろ他の猿が発情している頃だしな……はっ」

「何、はっとした顔でこっち見てんの?俺が発情期の猿だって言いたいの?」