待っている間、僕は一睡もできずに、天井と睨めっこを続けていた。日付はとっくに今日に変わり、そろそろ東の空が明るくなり始める時間だ。

 キサさんが言うには決行日は今日であるが、時間の指定まではされていない。つまりいつ爆発してもおかしくないのだ。

 今この瞬間に爆発してしまえば、僕らは瓦礫の下敷きになる。

 キサさんがそんなことをしないと僕は信じている。しかし、仕掛けた爆弾が誤った目的で仕掛けられたのならば、それを正せるのは僕しかいない。
それを確認しようにもキサさんと連絡が取れないようではどうしようもなかった。

 もう一度、メッセージの確認をするがメールは届いていない。

 こんなもの窓から投げ捨ててしまいたい。

 このまま逃げきろうとするなんてずるい。このまま本当に姿を現すことなく消えてしまうのだろうか。

 ふてくされて毛布にくるまっていると、断続的に何かが震える音がする。

 それが着信であることにようやく気付いて慌てて手に取る。相手はもちろん一人しかいない。

『もしもし? もしかして寝てた?』
「寝てないです」
『久しぶりだね。電話をするのはなじめてだね』
「はい」

 耳元で囁かれているようでくすぐったくなる。そんなことを考えている場合ではなかった。

「今どこですか?」
『久ぶりの再会にコメントはなし?』
「まだ再会していませんから。会って話がしたいです」
『積極的だね』

 キサさんはいつも通り、呑気な話し方をする。決行日が今日だというのに声に全く緊張がない。

『でも何のために会うの? 後は待つだけだよ』
「聞きたい事があるんです」
『電話で駄目なのかい?』
「駄目です」

 ちゃんと目を見て本心を聞き出したい。逸る気持ちを抑えて冷静に答えているつもりだが、キサさんは僕の気持ちを持て遊ぶように答えを返してくれない。判断しかねているのだろう。僕がただ寂しさに負けて連絡をよこしたのか、そうでないのか。

「キサさんがこの町に復讐をしたいのは誰のためですか?」

 電話の向こうで息を飲む気配がする。

「本当は何を壊す気なんですか?」
『学校の屋上で待っているよ』

 平坦な声でそれだけ言って電話は切れた。

 これでキサさんと会えるのは最後になるかもしれない。クローゼットを開けて制服に着替えていると、ふと白いマフラーが目に留まる。キサさんと出会った日に借りたままになっていた。それを首に巻くと微かにキサさんの匂いが残っていた。

 それからさらに奥にしまい込んであった白い筒状に丸められた紙を取り出す。

 これを取り出す日がくるなんて思いもしなかったけれど、これが僕らが出会う最初のきっかになっていることは間違いない。

 これで最後だ。この町を本当の意味で壊せるかは僕にかかっている。