を持ちお茶を飲み始めた。
「……どうしたんだ?」
 私は俯いた。
「俯いても分からないぞ。俺に言えないこと
じゃないだろ。笑ったりしないから」
「さっき、笑ったじゃないですか」
 彼は一口お茶を飲んでから言った。
「あれは、元気づけるためだ」
 彼は、私にそう言ってきたが疑った。黒目
を下に向けたり、私の目を見たり交互に見て
くる。しかし、松岡さんの様子を見ると真意
でもある気がする。
 ジ―と彼の目を見た。
「本当だから、疑わないでよ」 
照れながら私は頭を掻いていた。
私は彼に聞いた。
「……本当ですか?」
 彼は、頬杖をして笑顔で答えた。
「本当」
 ……この人は、悪い人ではない。信じてみ
ても大丈夫かもしれない。笑顔で答えた彼を
見て、私は言った。
「松岡さん、私今日面接があったんです」
「お、どうだったって。もう分かってるか」
「はい」
「今日、最終面接あったんですけど……私の
ミスで遅刻してしまって」
 松岡さんは片手でコップを持ちながら、口
をポカンと開けて苦笑いを浮かべていた。
「……それはドンマイ」
「……それで、もう嫌になってどこかにフラ
フラしてたら松岡さんがいて、今に至ります」
「……そうだったのか。……でもなんで遅刻
したんだ?」
 お茶を全部飲み終えたのかピヨを呼び寄せ
て、彼はピヨとじゃれ始めた。
「……私が時間を勘違いしてしまったんです」
 松岡さんは、ピヨを見ていたのが、え? 
と私を見て丸い目をしていた。
「……それは……ドンマイ」
「あはは、私情けないですよね」
 私は、頭をかきながら下に俯いた。
 ピヨを床に置いて、あっちで遊んできなと
言い私の方を向き直して彼は言った。
「確かに面接に遅れたのは悪い。だが、陽琉
自身本当にその面接に行きたかったのか?」
 その言葉に耳を疑った。いや、私自身そん
なことを思ったことがなかった。最終面接さ
え出来ればよかった。会社に入りたいという
強い願いだけだった。
 松岡さんの言う通り、行きたかったのか私
自身もよく分からない。でも、その為に面接
練習もした。
 自己アピ―ルも何度も練習した。ちゃんと、
就職出来るように頑張った。
 ちゃんと就職出来るように?
「……もしかして、行きたくなかったんじゃ
ないのか?」