「あ、そういえば時間大丈夫? なんか無理
に連れてきちゃったけど……」
「大丈夫です。それにもう……」
「もう……?」
「いや、なんでもないです」
 話しても私の気持ち分かるはずないし、私
が悲しい気持ちをするだけだ。
「じゃあ今時間あるね? 俺と話さない?」
「え?」
 いや、時間はあるけど、話す気分じゃあな
いんだけど。
「……いや、あの私」
 彼は、首を傾げていた。
「どうした?」
「……い、いえ。なんでもないです」
「そう。じゃあ、その椅子に座って」 
 彼は居間になにかを取りに行った。
 私は仕方なく、近くにあった椅子に座って
彼を待っていた。           
 すると彼は急いでお茶を持ってきてくれた
ようだ。腰を低くおろしながらテーブルにコ
トンとお茶を置いて彼は言った。
「……え―と陽琉さんは、就活生ですよね?」
「はい。そうです」
「なぜあんなところに行ったんですか?」
 ……言える訳がない。
 面接に遅刻して、不合格したことを。
「……」
 彼は、コップを握りしめながら私を見て言
った。
「……俺には言えませんか?」
「……」
 彼は私の目を逸らさずに見てきた。
 なんと優しい目をしているのだろうか。
 その目に奪われた。
「……じゃあ俺が当ててあげましょうか?」
 彼は、そのまま私の目を見ていて、この人
には私のことがお見通しのように思えた。
「……」
「……俺の推測では、就活で失敗した?」
「……正解です」
 なぜ、彼は私のことが分かるの―!
「なんで分かったんですか?」
私は目を丸くして彼を見た。
「……大体、スーツ着て落ち込んでいる就活
生はね?」
 私は苦笑いを浮かべた。
「……まあ、はい」
「あれだよ。笑顔になれば忘れる! イーッ
て」
 彼は私のほっぺたを両手で引っ張った。
「やめでくだざい」
 私の表情を見て、彼は腹を抱えて笑ってい
た。私の気持ちも知らずに私の表情を見て、
笑っていたので腹が立っていた。
「……はは。陽琉は、あれだな。面白い顔す
るんだな」
 さんづけからのいきなり、呼び捨て!
 さっき会ったばかりなのに!
「面白じろがらないでぐださい。わだじは真
剣に悩んでるんです」
 あ、と自分の口を手で抑えた。
 彼は私の頬を引っ張るのをやめて、コップ