ネコを飼ったことがなかったので、ネコグ
ッズを見るのが初めてだった。
 ネコグッズを弄りながら、テーブルに肘を
ついていた。弄っていると彼が戻ってきた。
「……ネコ、好きなのか?」
 上下の長袖、長ズボンを持ってきてくれた。   
 だが、長袖はネコの絵柄が入っていて、長
ズボンはネコと同じような色であった。
「あ、いや。そうですね。好きといえば、好
きですね」
 彼は靴を履き私の所へやってきて服を渡し
てくれた。
「あ、ありがとうございます」
 彼はピヨの所へ行き、ピヨを撫で始めた。
 私は彼を見た。その顔は微笑んでいて、幸
せそうな顔であった。私はその様子を見てい
た。すると、彼は振り返り私を見てきた。
 慌てて目を逸らして私の視界から外し、ネ
コのグッズを弄った。
 うわ、見られたの。バレたかな?
 恐る恐るまた彼を見た。彼は私を見ていて
目が合ってしまって気まずかったが、私に話
しかけてきた。
「なんだ? なんか用か?」
「い、いえ。あの、着替えたいんですけど、
どこで着替ればいいですか?」
「ああ、悪い。そうだったな。ここから、奥
の部屋に入って、右手にいくと、洗面所があ
るから。そこで着替えて」
「わ、分かりました。では服お借りします」
 おばあちゃんのように、よこいしょと両手
にテーブルをつき、椅子から立ち上がった。  
 借りた服を持って靴を脱ぎ、居間にお邪魔
した。
「し、失礼しま―す」
 真っ直ぐに歩いて右側に行くと、すぐ洗面
所があった。
 ガラっと扉を開けると、洗面所には綺麗に
揃えられたタオルが置かれていて、コップの
中に入っていた歯ブラシが一直線に立ってい
た。また、コップはひとつしかなく、一人暮
らしだと分かった。
 鏡や床など至るところ埃ひとつなく綺麗だ
った。呆然とその風景を見渡して、私は着替
え始めた。洗面所は、においひとつなく殺風
景であった。その風景に疑問に感じながら、
ス―ツを急いで脱ぎ、借りた服を着た。
 ガラっと扉を閉めた後、彼のところへ戻っ
た。彼は、私が戻ったことに気づいて私に話
しかけてきた。
 彼はピヨを抱いて、私の所へやってきた。
「うん、似合う、似合う」
腕を組みながら彼は私の全身を見て言った。
う、見ないでよ―!
「……あ、ありがとうございます」